グーグルの未来都市構想、「実験台になりたくない」現地で上がるプラバシーへの懸念

Sidewalk Toronto via AP

「民主的に選出された政府の3つのレベルが設立した法人であるトロント・ウォーターフロントは、埋め込まれたデータを集めて金儲けをする一部の営利目的の会社とどのように価値を共有するのだろう?」とディ・ロレンゾ氏は問いかけた。

 さらにディ・ロレンゾ氏は、誰が自律走行車を運用するのかにも触れ、「自治体が車両を維持するのか、それとも人々に個人の自動車をシェアするように強制するのか?」と尋ねた。同氏はまた、データを収集されることを望まない人々もその地域での居住を許可されるのか否かについても疑問を投げかける。

 フェイスブックとグーグルのプライバシーに関する一連のスキャンダルが契機となり、データに関する懸念は高まる一方だ。最近のAP通信の調査によって、グーグルがiPhoneやアンドロイド端末上で提供しているサービスの多くは、プライバシー設定で位置追跡データの保存をオフにしていても、実はそのデータを保存していることが明るみに出た。

 ウォーターフロントの理事長であるヘレン・バースティン氏は、「そのことが我々を躊躇させているのは事実だ」と認めた。

 開かれた政治の支持者であるビアンカ・ワイリー氏は、誰がこのプロジェクトの作り出すデータを所有することになるのか、また、データをどのように収益化するのかについてサイドウォーク・ラボがいまだ見解を示していないことは、根強い懸念であると述べた。ワイリー氏は、グーグルは金儲けのためにこの地に乗り込んで来るのだから、カナダ人はグーグルが獲得するデータや製品の恩恵を受けるべきだと語った。

 ワイリー氏はさらに、「我々は、誰かの研究や開発の実験室になるためにこの地に住んでいるのではないし、世界的な規模で売り出そうとしている製品のために客寄せの目玉商品になりたいとも思わない」と言った。

 オタワの特許弁護士、ナタリー・ラフール氏は、現時点での協定の真相は、データに関わる事項が誰に帰属するのかを後日定めるものとしており、つまりは契約の草案は適切に起草されておらず、このままではデータが生み出すいかなる特許権もグーグルに帰属するようになることを意味すると指摘し、「企業を信頼し過ぎるのは禁物だ」と述べた。

 しかし、ウォーターフロントの理事長、ヘレン・バースティン氏は、近日中に発表される基本計画はデータに関する懸念に取り組むことになるだろうと言った。バースティン氏によると、当局者は、トロントを今後成長する新しい産業のグローバルな拠点にしようと望んでいるという。

 バースティン氏は「誰もが、手に負えない事態を招きかねないデジタルとテクノロジーの持つ側面を心配しているが、私は、データについてはそれほど心配しておらず、むしろ本当に興味深くて革新的なコミュニティを開発する機会が得られることへの期待が大きい」と言った。

 自身の地元でこの開発が行われることになる国会議員のアダム・ヴォーン氏は、街でわき起こるビッグデータと都市のインフラについての議論に世界中から注目が集まることになり、トロントをその議論の最前線に据えたいと述べた。

 さらに、ヴォーン氏は、「グーグルは、世界的にも地域的にも政府よりも先行している。だから、懸念の原因となることもあるが、同時に大きなチャンスでもある」と語った。

By ROB GILLIES, Associated Press
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Text by AP