イーロン・マスクが描く夢のプロジェクトたち シカゴの新地下交通も

Boring社が手掛ける、シカゴ都心部からオヘア国際空港までを結ぶ地下トランジットシステムのプロジェクト(The Boring Company via AP)

 億万長者のイノベーターであるイーロン・マスク氏は最近、シカゴ・オヘア国際空港を中心に旅行者を時速150マイル(241キロ)で運ぶ地下トランジットシステムのプロジェクト構想を発表した。これは、彼が描く夢のプロジェクトの一つにすぎない。

 SpaceXとTeslaの最高経営責任者(CEO)でもあるマスク氏が唱える最も野心的なプロジェクトのいくつかについて、その現状および完成に向けた課題をみていくことにする。

◆火星ミッション
 人によって見方は異なるかもしれないが、マスク氏によるおそらく最も大胆で本格的なプロジェクトは火星への有人派遣ミッションだろう。彼はこの惑星の植民地化についてさえも公言している。SpaceXのウェブサイトによると、「究極の目的は、火星への初の宇宙船を2022年に派遣すること」とある。初となる火星の無人ミッションでは、水の存在を確かめ、人の生存を可能にする資源を特定していくことになる。それでは有人の火星ミッションはどうだろうか? マスク氏は、無人派遣の2年後、つまり2024年になるとみている。一方、NASAでは、火星への有人飛行の現実的な目標時期を2030年代半ばとしてきた。

 火星に到達できる能力を持つ強力な新型ロケットはすでに開発されつつある。ロサンゼルス港湾委員会は4月、SpaceXに対してロケット製造施設を港湾地区に建設する許可を与えた。

 未解決の課題:火星に到着後、放射線から身を守るにはどのようにすればよいか(火星には地球に存在する大気がない)。心理学的な課題もある。特に、大がかりな植民施設が作られるまでの間、火星にいる人たちは極度の孤独、そして退屈さ、にどのように耐えるのだろうか。

◆トンネル
 シカゴは、マスク氏所有のBoring社が輸送プロジェクト用に開発したトンネル掘削技術を活用できそうだとして彼が名指しした都市の一つだ。その際たる例は、スケートと呼ばれる電気そりのような乗り物で乗客をロサンゼルス国際空港に運ぶものがある。この唸るような交通手段に「夢中になっている」と昨年つぶやいたマスク氏によると、今まさにトンネル工事が始まるところだという。マスク氏は先月、ロサンゼルス郊外のトンネルの一部はすでに工事がほぼ完了しており、間もなく走行実験の準備を進めると述べていた。こうしたプロジェクトの課題は、国および地方政府から所定の許可を得ることである。郊外の市議会は昨年、マスク氏が保有するSpaceXのロケット工場からロサンゼルス国際空港(LAX)東部までの約2マイル(3.2キロ)に及ぶ試験用トンネルの工事を承認した。

◆ハイパーループ
 マスク氏は、米国の交通システム全般を刷新したいとも考えている。磁力と太陽発電を活用することで、長距離を最高時速750マイル(1,200キロ)で特別仕様のカプセルが移動するほぼ真空のチューブを使った超高速ハイパーループシステムの運用を構想している。これで人と荷物を運ぶという。

 そして多くの州もこの構想を真剣に検討している。コロラド州、テキサス州、ミズーリ州など複数の地域でフィージビリティスタディを実施中である。ミズーリ州では、このシステムの採用でセントルイスとカンザスシティを30分ほどで移動できるか検証中だ。

◆「優れた」知能
 マスク氏は2017年、Neuralinkという新たなベンチャー企業を立ち上げたと発表した。この会社では、「人間とコンピュータをつなぐために超高帯域の埋め込み可能な脳・コンピュータのインターフェース」を開発している。これを埋め込むことで神経障害の治療に役立つ可能性がある。マスク氏は同時に、人工知能(AI)コンピュータが将来、人類にとって脅威となる可能性について問題提起した。脳とコンピュータをつなぐことでデータ処理に関する人間の能力はスーパーコンピューターと同レベルになるという。耳の不自由な人の治療など、身体と機械を直接結びつける技術はすでに実用段階にある。ただ実際には、脳とコンピュータを今後数年でつなぐという計画は過度に楽観的であると一部の神経科学者は話している。

By MICHAEL TARM, Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP