2歳からコーディングを学ぶべき? 英起業家が特に女の子に勧める理由とは

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 イギリスの最も著名なITのパイオニアが、子供は2歳でコーディングの基礎に触れるべきだとガーディアン紙で主張している。2歳と言えばまだ喋ることもおぼつかない時期であり、突拍子もない発言に感じられる。プログラミングの科目において大学入学資格のAレベル判定が出た生徒のうち、女子は9.8%のみだったという先日の報道を受け、早期教育が男女比率改善の切り札になると言う。

◆2歳でコーディングに触れることは早すぎない
 大英帝国勲章の受章者デイム・ステファニー・シャーリー氏は、2歳でコーディングを始めることについて次のように述べている。

「私はそれが早すぎると思いません。最も成功しているコーダーは5、6歳でコーディングをスタートしています」。

 シャーリー氏は、特に女の子の場合、小さいうちであればコーディングの謎解きの情熱に火が付きやすいのではないかと考えているようだ。一般的にその時期は物事を吸収しやすい時期であり、実際2歳から7歳の間に基礎に触れるのが良いという証拠もあると言う。またコンピュータおたくといったステレオタイプを植え付けられるずっと前にスタートすべきだとしている。

 タイムズ紙によると、英国のITの専門家のうち女性は17%にすぎず、その比率は3年間変わっていない。ソフトウェア開発者に至っては、女性は12%である。
こういった男女比になるような性差別的な産業文化、また少年にはコンピュータを奨励し、少女には奨励しないような社会を批評家たちは非難している。

◆幼児がコーディングを学ぶことは良いことか
 小さいうちからコーディングを学ぶことが、将来の成功に結び付くのだろうか。米ニュースサイトの『GoodCall』によると、テキサス州ブルックヘブン・カレッジの幼児発育の専門家であるジョニー・カストロ氏は、早期のコーディング教育に反対だ。子供たちは遊んで幼年時代を楽しむべきで、15~16歳になるまではそういったことは必要がないと考えている。また、何か特定の分野でエキスパートになる前に、数学、科学、またその他の分野において広く学ぶことがより重要だと主張する。

「Raising Generation Tech(テクノロジーに接する年代を引き上げること)」の著者であるジム・テイラー博士は、親たちはコーディング教育に熱心であるが、幼い頃にコーディングを学ばせることは成功の鍵ではないと主張する(GoodCall)。

「この技術主導型の世界で子供たちを成功に導くのは、創造的、革新的、そして広範に考えることができるかどうかであり、それは自由で型にはまっていない遊びを通して育まれるのです」。
 
 テイラー博士は、脳外科医や弁護士、天体物理学者が子供の頃からそのための学習を始めるわけではなく、ITだけが特別ではないとし、子供たちを外に遊びに行かせるべきだと主張している。

◆幼児が画面を長時間見ることは危険
 コーディング作業は、モニターを長時間見続けることにつながるが、それに関する危険はどのようなものがあるのだろうか。かのスティーブ・ジョブズ氏も、自身の子供にはiPadを禁止していたと言われている。

 英ニュースサイト『Tech Advisor FROM IDG』は2歳以下には画面を見せるべきではないと主張する。その根拠として、2013年にアメリカの保険局が、2歳以下の子供は画面の前に座らせるべきではなく、それ以上の年齢では一日2時間以内までを推奨したこと、またフランス政府が3歳未満の子供に向けた地上デジタル放送を禁止しており、オーストラリアやカナダも同じような推奨とガイドラインを持っていることを挙げている。

 幼児の脳の発達におけるデジタルテクノロジーの影響を研究したハーバードの臨床心理学者がいる。キャサリン・シュアイナアデア氏は、赤ん坊の脳には言語と感情、そしてそれを管理する機能が備わっているが、2歳以下の脳には、テクノロジーは生産的な役割を果たさないと伝えている(Tech Advisor FROM IDG)。

 イギリス政府は、子供はテクノロジーとコンピュータにとても小さな頃からさらされるべきという2008年に打ち出したガイドラインを撤回した。現在政府のガイドラインはないが、英国国立医療技術評価機構は、子どもはテレビをみない日をつくるか、もしくは1日2時間までと伝えている。

「スクリーンタイムの管理とスクリーン依存」について講義をするアリック・シグマン博士は、小さな頃から画面ばかり見ていると、残りの人生で長時間画面を見るように習慣が作られてしまう、と言う。画面を見ていると、ドーパミンが放出され、中毒になる。スクリーンを「電子コカイン」と「デジタルヘロイン」と呼ぶ科学者もいるほどだ。

 神経科学者たちの間では、毎日ドーパミンが長年生産されていると子供の脳の報酬回路が変わる可能性があり、よりスクリーン依存になるとシグマン博士は警告する。また、長時間画面の前にいることで社会的なつながりの欠如が、生理学的変化、病気の発生率の増加、早期死亡率の増加に関連しているとも主張している。

 2歳からコーディングの勉強をするという発想は、子供の将来を考えると望ましくないかもしれない。

Text by 鳴海汐

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