VRが医療を改善している5つの方法

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著:Wendy Powellポーツマス大学 Reader in Virtual Reality)

 バーチャルリアリティは、単なる新しいエンターテインメントとしての形態にとどまらず、医療分野では治療から訓練に至るまで非常に幅広く応用されている。ここでそのいくつかを見てみよう。

◆疼痛管理
 バーチャルリアリティ(VR)が痛みを緩和するのに役立つ、という科学的な証拠がある。痛みは脳内にある体性感覚皮質と島皮質という部分と関連しているが、患者がバーチャルリアリティに没頭しているときは、これらの脳の部分はさほど活動していないことが判明している。患者の症例によっては、それに適した医療処置が非常に大きな苦痛を伴いがちな場合があるが、患者がその苦痛に耐える手助けとしてバーチャルリアリティが使われる場合もある。

 また他の研究では、切断手術を受けた者がVR治療の恩恵を受けられることが示された。四肢の切断手術を受けた者は、切断したはずの部位の深刻な痛みに頻繁に悩まされることがあるが、この痛みの緩和は従来の方法では困難である。しかも、コデインやモルヒネといった強力な鎮痛剤が効かないことも多い。しかし、「バーチャルリアリティ鏡療法」と呼ばれる技法は、VRヘッドセットを装着し、もはや存在しない指や手の仮想バージョンを操ろうとする所作を行うことで、患者がこの「幻肢痛」に上手に対処するための大きな支えとなっている。

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◆理学療法
 バーチャルリアリティを用いて身体の動きをトラッキングし、VRゲームとの相互作用の一環として患者に運動療法の動作を行ってもらうことも可能だ。例えば、仮想のボールを捕えるためには、患者は自身の頭の上に腕を持ち上げる必要があるだろう。

 ジムで黙々と運動するより、バーチャルリアリティの世界で運動する方が格段に楽しい。だから誰もが皆、もっとたくさん運動しようという意欲が湧いてくる。さらに、他にも様々な有用性がある。例えば、歩行動作に不安を抱く患者のために仮想環境を用意し、その中で実際よりもはるかにゆっくりと動いているように見えるよう仮想環境を制御することができる。こうすると患者たちはごく自然に自身の歩みを速めていくのだが、自らそうしようとしているという自覚がないので、患者の痛みや不安が増大することはない。

 人々がVRシステムをどのように認識し、VRシステムとどのようにやりとりするのかを研究することは、バーチャルリアリティのより優れたリハビリへの適用手法を考案するのに役立つ。

◆恐怖心・恐怖症
 もし、何らかの理不尽な恐怖に怯えている場合であれば、バーチャルリアリティでその実態を見せられるのは最も避けたい、と考えるかもしれない。しかし実はこれは医療分野でのVR治療で最も確立された治療法の1つだ。恐怖症の治療においては、療法士に導かれながら患者が自身の恐怖にゆっくりと時間を掛け、身を委ねていく段階的暴露療法と呼ばれる治療法がしばしば用いられる。バーチャルリアリティであれば各患者のニーズに正確に合致させた完全な調整を行い得るため、この療法にとってバーチャルリアリティは最適である。そして、病院でも家庭でも、どこでもこの療法を実施することができる。この療法は高所恐怖症クモに対する恐怖症を治療するために用いられるだけではなく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)からの回復にも有効である。

◆認知リハビリテーション
 私たちは日頃当たり前のように買い物をし、週末の予定を決めたりしているが、脳卒中などの外傷や疾病によって脳に傷害のある患者は、そのような日常的な行動に関しても相当の苦労を強いられることが多い。バーチャルリアリティの中でそれらの行動を再現し、患者が自身に合わせてバーチャルリアリティの中で行動の複雑さのレベルを上げながら日常行動の練習ができるようになると、患者の回復は加速され、より高いレベルの認知機能を回復するのに役立つ。

 また、医師たちはこれら同一の仮想環境を評価ツールとして用い、現実的で複雑な様々なタスクを実行している患者を観察しながら、記憶の喪失、注意力の散逸、または意思決定の障害に関する脳の領域の特定につなげようとしている。

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◆医師と看護師のためのトレーニング
 言うまでもなくバーチャルリアリティは患者たちのためだけのものではない。医療の専門家たちにも恩恵をもたらす。医師や看護師が日常の医療処置の手順を実行するには長い時間を要し、またそのようなトレーニングは多忙な専門家によって実施されなければならず、高いコストもかかる。しかし、医療の専門家たちが解剖学を習得し、手術を練習し、感染対策の実践を教わるためにここでもバーチャルリアリティがますます多用されている。

 現実的な手順に沿ったシミュレーションに没頭し、その各々の段階と手技を実践してみることは、ビデオを見たり、混雑した手術室内で専門家の公開手術を見学したりするよりはるかに優れたトレーニングとなる。低コストのVR機器を用いれば何度でも操縦と再現が可能なシナリオが提供され、その成績評価を即時に得られる。いまや私たちは、古い学舎の教室に集うよりも格段に強力で新しい学習ツールを手に入れたのである。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by ka28310 via Conyac

The Conversation

Text by THE CONVERSATION

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