「インドの森の男」40年木を植え続け、死にゆく島を楽園に

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♦︎ゾウの楽園が生まれる
 木々を失い荒涼としていたマジュリ島の景色は、パイェン氏の長年にわたる活動が大きく変えた。いまや10万本を超える木々が育っており、パイェン少年の意識を変えたヘビたちはもとより、種々の野生動物や野鳥たちの楽園となっている。ニュー・インディアン・エクスプレス紙(3月3日)は、比較的近くに位置するカジランガ国立公園からも多くの動物たちが訪れると報じている。マジュリ島のみならず、地域に棲む生命の安らぎの場となっているようだ。

 インドを代表する動物であるゾウにとっても、森は貴重な安全地帯として機能している。メディウム誌は、マジュリ島が過去70年間で半分以下の面積にまで縮小していると述べ、その危機を伝えている。しかし地道に一本一本を手で植樹してきたパイェン氏の行動などが実を結び、いまでは100頭ものゾウたちが毎年訪れ、半年ほど森で過ごしていくようになった。森ではこれまでに10頭ほどの赤ちゃんゾウが生まれており、繁殖と種の存続にも貢献している。

 現在では森林の自己再生産能力が機能しており、以前よりも容易に森を広げることができるようになった。しかしヒンドゥー紙は、一部の人間が敵になっているという悲しい事実を伝えている。ひそかに島に侵入して木々を伐採しようとする輩が後を断たず、地元の森林当局に警戒を要請しているという。

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Text by 青葉やまと