「インドの森の男」40年木を植え続け、死にゆく島を楽園に
インドのマジュリ島でひっそりと暮らすジャダブ・パイェン氏は、「インドの森の男」の異名を持つ。彼は少年時代から人生の40年間を自然の再生に捧げ、死にゆく運命にあったひとつの島を野生動物の楽園に作り替えた。その広さは東京ドーム117個分、あるいは東京都中央区の面積の半分以上に相当する。黙々と木を植え島を救った彼の半生は二度ドキュメンタリー映画化されるなど、著しい成果を生んだ環境活動家として脚光を浴びている。
♦︎手相が語った運命
環境保護に精力を傾ける現在57歳のパイェン氏だが、その運命は幼い日から決まっていたのかもしれない。ある男に手相を見てもらったパイェン少年は、自然環境と関わりのある人生になると告げられた。エピソードを紹介するヒンドゥー紙は、手相占いを信じるかは別にして、結果として予言は的中したと述べている。
少年になったパイェン氏を自然保護へと駆り立てたのは、洪水のシーズンに見た、とある忘れられない光景だ。中洲状のマジュリ島は森が失われ、浸食が進んでいた。洪水で数百匹ものヘビが中洲の砂の上へと打ち上げられ、水が引くとそのまま干からびて死んでいったという。死に絶えたヘビの姿を人間の将来に重ねた少年は、胸騒ぎを覚える。近くに住んでいた部族の老人に教えを乞うたところ、25株の苗木を授けられ、木を植えるよう伝えられた。これがその後40年以上にわたる氏の活動の最初の一歩となった。パイェン少年は学校を中退し、活動に専念する。こうして育てられた森は、現在では550ヘクタールに及ぶと同紙は伝えている。
さらにパイェン氏の植樹活動は、マジュリ島に近接する砂州にも広がりを見せている。デカン・ヘラルド紙によると、今後2000ヘクタール規模の植樹に意欲を示すなど、60歳近い氏の活動はまだまだ精力的に続きそうだ。