水をめぐり世界各地で「軋轢」 国際河川のダム問題、欧州の砂漠化リスク

ひび割れた土が露出したスペイン・カタルーニャ州のサウ貯水池(4月18日)|Emilio Morenatti / AP Photo

 命の源ともなる水をめぐる抗争は昔から存在する。ダム建設による国際的な軋轢(あつれき)はもとより、気候の変化で年々干ばつが深刻なヨーロッパでも、限りある水源をめぐってさまざまな論争が絶えない。

◆母なる川、メコンの危機
 東南アジア最長のメコン川は、チベット高原から中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを通り南シナ海に流れ込む。その名が意味する「母なる川」にふさわしく、豊富な資源を持ち、周辺に住む人々の生活に大きく関わってきた。メコン川で捕獲される魚は毎年200万トンと、この川が世界最大の淡水魚の宝庫であることを示している。だが、このメコン川も、昨今は水不足の危機にさらされている。その原因の一つは中国によるダム建設だ。

◆ダム建設に起因するさまざまな問題
 ダムは下流地域を放水や決壊による洪水の危険にもさらす。中国は、チベット自治区のヤルツァンポ川(インド名:ブラマプトラ川)上流域でも巨大ダム建設計画を進めており、下流にあるインドとの軋轢の原因の一つになっている。

 またダム建設は生態系の破壊など環境にも悪影響をもたらす。近年では、地震や地すべり、干ばつなども誘発することを専門家が指摘している(ラ・ガゼット・ド・ラ・モーリス)。

 アフリカ大陸においても、エチオピアがナイル川上流のルネサンスダム建設を発表した2011年以来、同国と下流のスーダンやエジプトとの交渉はスムーズにいっているとは言い難く、特にエジプトとの間には大きな軋轢が生じている。

Text by 冠ゆき