ごみや天然素材に着目するデザイナーたち 藻の照明、コルク服、ペットボトル靴など

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 ニューヨークを拠点に活動するデザイナー兼建築家、ニーナ・エドワーズ・アンカー氏の手がけるスコンス(壁取り付け用燭台)やシャンデリアは、一見するとLED電球に古代の羊皮紙の巻物、またはバター入りのトフィーを巻き付けたように見える。

 近づいて見てみると(あるいは同氏に聞いてみると)、作品が実際には藻でできているとわかるだろう。

 アンカー氏はオスロ建築デザイン学院在学中、博士課程で素材と照明に関する研究プロジェクトに取り組んでいるときに、そのアイデアを思いついた。現在はスコンス、ランプ、さらに「クロロフィタ(緑藻)」と名づけたシャンデリアなどの作品を創作している。

 乾燥させた藻を、それとわからないように紛れ込ませたりはしない。シェードには、自然な状態の藻の不完全さがそのまま表現されており、蜂蜜のように半透明な色味をしている。

 アンカー氏は「素材のそのままを損なうことなく、唯一無二の特質を表現したいと当初から思っていました」と言う。

 同氏のほかにも、これまでの素材から脱却し、デザインとサステナブルな素材調達・製造を両立させる方法を見出しているデザイナーは多数いる。

 アンカー氏の率いるエヌ・イー・エー・ステュディオス(NEA Studios)のチームは、ほかの天然素材も試験的に取り入れており、「照明には、紅藻・橙藻、サステナブルに調達したフェザー、カブトガニの甲羅、砕けた貝殻、それから食べ残しのコーンにも目をつけています。家具ならば、レンズ豆やソバの実などの有機素材は布張り家具の中身にできますし、さらに天然のラタン椰子やコルク、竹もあります」と述べている。

 回収したペットボトル、木材、植物繊維を住宅業界やファッション業界で使える素材にしようという試みには、大きな進歩が見られる。これらの業界は、綿花生産による環境への悪影響や、プラスチックによる汚染といった多数の問題に取り組んでいるところだ。

 世界中のテキスタイルのパターンと開発について最新の商品を集めた見本市「ハイムテキスタイル」が1月10日~13日の期間、ドイツのフランクフルトで開催された。より環境に優しい方法で新製品を生産しようと、素材のリサイクルに重点が置かれた。

 同見本市のテキスタイルおよびテキスタイルテクノロジー担当バイスプレジデントを務めるオラフ・シュミット氏は「ナイロン、プラスチック、金属といった無機素材の再利用法を、各社が提示するようになるでしょう。たとえばカーペットタイルなら、役目を終えたら廃棄し、新しいタイルの原材料として使用できます」と言う。

 リネンやラフィア椰子といった有機素材のリサイクルに取り組んでいる企業もある。

 シュミット氏は「それから、藻です。防音性に優れた防音マット、防音パネルの製造に使われていますが、耐火性があり、湿度の調整能力も高い。パネルは、使い終わったら細断して再利用可能です」と言う。

 昨年夏に行われたハイムテキスタイルでは、革新的な素材として、コルクや回収ペットボトルの繊維などが展示された。シュミット氏よるとコルクは通気性に優れており、低刺激性で抗菌効果がある。また、断熱性も高く頑丈な上、ほかの素材に比べてサステナブルに収穫できるという。

 コルクを用いて作られたインテリア製品には、トレイ、テーブル、壁板、照明などがある。たとえば『エッツィ(Etsy.com)』では、模様入りのポルトガル産コルクシートを購入できる。

 コルクはさらに、粉砕してから柔らかいヴィーガンレザーの生地にも使われる。このレザーは椅子やソファのカバーに使用されたり、ジャケットやパンツ、ハット、バッグ、傘になったりしている。たとえばスヴァラ(Svala)は、コルクベースの生地を使ってトートバッグ、バッグ、クラッチバッグなどを製造している。

 ファッション業界アナリストのヴェロニカ・リバー氏は「最重要トレンドは、サステナビリティです。業界は、環境への影響を最小限にとどめ、もう最大の汚染源になることのないよう努力しています」と言う。

 現在、リジェネラティブ(環境再生)な供給源から調達した天然素材を採用している企業としては、パタゴニア(Patagonia)、ノース・フェイス(North Face)、ティンバーランド(Timberland)などが挙げられる。

 シュミット氏が例に挙げた回収ペットボトルは、カナダのシューズメーカーであるネイティブ・シューズ(Native Shoes)により「ハイドロニット」と呼ばれるメッシュ生地の糸に生まれ変わったり、同社が「履くセーター」としている軽量シューズやブーツに使用されたりしている。

 イタリアのブランド、カンポス(Kampos)は、乾きやすく柔らかいペットボトル由来のフィラメント糸で作った水着やレインウェアを販売している。糸自体は、エッツィにあるユニーク・ヤーンのショップで糸玉として販売中だ。軽くて伸縮性に富み、頑丈で、棒針編みやかぎ針編みで、または織ってトートバッグなどの商品や、テキスタイルアートを作成できる。

 ここからは、そのほかのベンチャー企業をいくつか紹介する。

 イタリアの企業、フルマ(Frumat)は、アップルジュースのメーカーが出した廃棄物から、植物ベースのレザーを開発した。

 2人のイノベーター、アドリアン・ロペス・ベラルデ氏とマルテ・カサレス氏は、「デセルト」というノパルサボテンの葉を使ったレザーを作り出した。サボテンは干ばつと高温に強く、痩せた土壌にも耐えられるので、新素材の開発者から注目が寄せられている。

Marte Cázarez via AP

 ピニャテックス(Pinatex)はパイナップルの収穫時に出たごみを活用して素材を作り、フィリピンの農家の仕事をサポートしている。この素材は、シューズ、アクセサリー、服、布製家具のメーカーに販売されている。

 そしてカリフォルニアのボルト・スレッズ(Bolt Threads)が生み出したのが、「マイロ」だ。菌糸体をベースにしたレザーで、アディダス(adidas)、ルルレモン(lululemon)、ステラマッカートニー(STELLA McCARTNEY)といったブランドで使用されている。

 住宅で使われているガラスの壁用タイルには、もともと車の部品として作られたものもある。廃棄されたフロントガラスを潰して、混ぜ合わせたものを焼き固める。このようにスラリー(粉末状の固体と液体の混合物)を粉末状にしたものが、焼結ガラスという頑丈な乳白色の素材になる。

 ボストンに拠点を置くモザイクタイルメーカー、アータイック(Artaic)の創設者であるテッド・アクワース氏は「現在、弊社が主に取り扱っているタイルは4品目ありますが、焼結ガラスはその一つです。色の幅がとてつもなく広く、耐久性が大変優れています」と話す。

 マサチューセッツ州、ケンブリッジのデザイナー、アニー・ホール氏は、最近手がけたキッチンのバックスプラッシュに、クレメンタイン、スカイ、ロビンズエッグブルーのガラスタイルを混ぜて使用した。

Michael J. Lee via AP

 同氏は「私のデザインプロジェクトに使う製品としては、サステナブルに生産されたものを見つけたいと常に思っていますが、焼結ガラスがぴったりだったので嬉しかったです」と述べている。

By KIM COOK Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP