COP27の重要ポイント 「損失と被害」、排出削減を求める声

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 国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が11月7日に開幕した。気候変動対策について話し合う、1年のなかでも最も重要な国際会議である。地球温暖化や異常気象による災害がこれまで以上に頻発化、激甚化している状況を受け、温室効果ガスの排出量削減を早急に強化するための議論が行われる。

 世界各地より多くの首脳級や、数千人もの外交官、気候変動問題の交渉担当者、経済界の指導者、活動家、ジャーナリストが、紅海に面した都市シャルムエルシェイクに集い、18日までの会期中、協議や交渉に参加する。

 初日に行われた会議において、エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は「私たちの介入なくして気候変動は止まらない。残された時間を最大限に活用する必要がある」と訴えた。

 指導者のなかでもいち早く気候変動について警鐘を鳴らしてきたアル・ゴア元アメリカ副大統領は、化石燃料への依存からの脱却をめぐり、指導者は「生きるか滅びるか」の選択を迫られていると言い表した。

 ナイジェリア環境省のモハメド・アブドゥラヒ大臣をはじめとする多くの参加者は、将来的には温室効果ガス排出量の削減よりも大きな枠組みでの取り組みが必要であると訴える。気候変動へ大きな影響を与えてきた先進国は、異常気象による打撃に苦しむ途上国を支援する必要がある。

 アブドゥラヒ大臣は「責任のなすり合いはやめるべきである」と話し、被害を受けやすい国に対する資金援助や補償をめぐる交渉には「積極的に」参加することを表明した。

◆損失と被害
 気候変動をめぐる交渉では、「損失と被害」は補償を意味する。これは、気候変動を引き起こしている温室効果ガス排出に大きな責任を負うべき先進国が、打撃を被ることの多い途上国に対して補償をする立場にあることが示されている。

 これまでの長い間、このような見解が気候変動をめぐる議論の中心になったことはない。7日に行われた協議では、この問題が優先的に話し合われた。

 「損失と被害」は今回初めて、途上国によってサミットでの協議項目に加えられた。さらに、多くの指導者がこの問題を提起し、取り組みを進めるよう強く訴えた。今年のサミット開催国となったエジプトは、アフリカの途上国である。それを象徴するかのように、この取り組みを率先して後押ししているようだ。

 ガーナのナナ・アクフォ・アド大統領はAP通信に対し「被害は明らかである。責任の一端を担う人は、ほかの人に対して補償を行う必要があることをしっかりと認識するべきだ」と主張した。

◆混乱のさなか、交渉を前に進めること
 関心の集まる出来事がほかにも多くある状況で、各国の指導者は演説を通し、ほかの問題に気を取られることのないように交渉相手国や担当者に強く要請した。ロシアによるウクライナ侵攻は8ヶ月目に入った。この影響により、グリーン(環境にやさしい)エネルギーへの転換を加速させた国もあれば、エネルギー不足を補填するために石炭などの低質燃料へ後戻りし、批判を受けている国もある。そして15日から開催されるG20サミットには、世界の主要先進国の指導者が集まる。COP27での議論は開催地のインドネシア、バリ島へと場所を変えて続けられることになるだろう。

 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「今、世界で起きている危機的状況は、後戻りすることや見せかけだけの環境保護活動を行うことの言い訳にはならない」と釘を刺す。

 サミットの協議内容からは外れ、今回参加を見送った首脳陣が話題に上げられた。不参加国が果たすべき義務をめぐり、その不在が意味することについて憶測が飛び交った。

 温室効果ガス排出量の最も多いニ大大国、中国とインドは協議への参加を見送り、代わりに次官級の職員を交渉のために派遣している。

◆エジプト人活動家によるストライキ
 投獄中の活動家であるアラア・アブデル・ファタハ氏は今回のサミット開幕を機に、これまで行ってきたハンガーストライキに加えて、水分を摂取することも拒絶していると家族が明かした。アムネスティ・インターナショナルのアニエス・カラマール事務局長は7日、エジプト政府が同氏を解放しなければ、生命にかかわる恐れがあると警告した。

 アブデル・ファタハ氏(40)は、この10年間の大半を檻のなかで過ごしてきた。多くのエジプト人にとって同氏の拘留は、かつての独裁体制が復活していることを意味するものだ。同氏は1日に100キロカロリーのみを摂取するというハンガーストライキを、すでに半年以上も続けている。

 解決への後ろ盾になればと妹のサナア・セイ氏は7日の朝早く、トルコの都市イスタンブールを経由し、ロンドンからシャルムエルシェイクに到着した。

 到着後、セイ氏は「最善を尽くし、兄の問題に光を投じたい。兄を救うためにここに来ました」と話している。

 2013年以降、シシ大統領は大規模な弾圧を行い、数千人ものイスラム過激派のみでなく、2011年に起きたエジプト革命に関与した活動家を宗教問わず投獄してきた。残された活動家やジャーナリスト、学者の多くが国外へ逃亡している。

◆サウジアラビアが率先して取り組むこと
 予想していた通り、COP27の会場内外においてサウジアラビアは大きく存在感を示した。サミットが開幕した7日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は中東地域の気候変動への取り組みを支援するために25億ドルを拠出すると発表した。

 サルマン皇太子はこの支援金について、サウジアラビアが1年前に立ち上げた「中東グリーン・イニシアチブ」の運営費と初期プロジェクトに活用する予定だと話す。サウジアラビアは、サミット場外に同イニチアチブに特化した大きな展示場を設置した。

 皇太子はさらに、サウジアラビアの公的投資基金は循環型炭素経済を実現させることで、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることを目指すと発表した。

 気候変動問題にかかわる多くの活動家はこのような戦略や投資について、世界最大の産油国であるサウジアラビアがこれまでの経済活動を今後も継続させていくための手段でしかないと指摘する。提示された循環型炭素経済に向けた戦略は、段階的に化石燃料の使用を廃止していくことよりも、信憑性のない二酸化炭素回収・貯留技術に重点が置かれたものだという。

By PETER PRENGAMAN
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP