グレートバリアリーフ、一部が観測史上最高の被覆率に 「危機遺産」指定を回避できるか

Great Barrier Reef Marine Park Authority via AP

◆格下げを懸念 豪政府には朗報?
 グレートバリアリーフはユネスコにより1981年に世界自然遺産に登録されているが、サンゴの激減や水質汚染などの問題を受けて、ユネスコの世界遺産委員会が、「危機遺産」指定する動きを見せていた。オーストラリアはこれに猛反発し、激しいロビー活動でユネスコの判断を先送りさせた。(ロイター

 前政権は、10億豪ドル(約940億円)を投入してサンゴ礁の保護を含む投資計画を発表したが、ロイターによれば不十分だと非難されていたという。「危機遺産」への格下げを話し合う会合は6月に予定されていたが、ロシアのウクライナ侵攻によりキャンセルされていた(ワシントン・ポスト紙)。次回会合のためには、サンゴ礁回復のニュースは豪政府にとって助けになるかもしれない。

◆予測外れた専門家 ネガティブ情報に不満
 一方、豪スカイニュースの番組『アウトサイダーズ』は、サンゴ礁復活のニュースを報じ、これまでのネガティブなニュースがグレートバリアリーフの観光地としての評判を傷つけたと主張している。番組に出演した海洋物理学者のピーター・リッド氏は、白化でサンゴ礁が失われていると誇張したいくつかの組織はひどかったと思わざるを得ないと発言。その多くがまったく信用できないことが、疑う余地なく証明されたと断じた。

 グレートバリアリーフ財団によれば、グレートバリアリーフの経済的、社会的、象徴的な資産価値は総額560億豪ドル(約5.3兆円)、国家経済への貢献は64億豪ドル(約6024億円)、支える雇用は6万4000人ということだ。実際に海外ではサンゴ礁は壊滅状態にあると思っている人もいるとアウトサイダーズのキャスターは指摘しており、これまでの報道による風評被害もあるのかもしれない。

 もっともAIMSのマイク・エムズリー上級研究員によれば、確認されたサンゴの増加の大部分は成長の早いミドリイシ属のサンゴで、波のダメージに弱く、水温の上昇で白化しやすいという。またオニヒトデの好物でもあるため、今後の環境の変化で、回復が短時間で逆転する可能性もあるとしている。今年の状況だけではサンゴ礁が完全に回復したとは言い難く、楽観視は禁物だろう。

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Text by 山川 真智子