若者の心を蝕む「気候不安」 日常生活に負の影響も

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◆終末論こそ脅威、楽観的思考と行動を
 米テクノロジー系メディアのワイアードに寄稿した、英オックスフォード大学運営のデータベース「Our World in Data」の研究責任者ハナ・リッチー氏は、気候変動に対する若者の悲観的な傾向を問題視し、警鐘を鳴らす。大人が終末論を説くことは子供たちにとって残酷なだけでなく、それを現実のものにしてしまう可能性が高いと主張する。

 同氏によると、信頼できる気候科学者たちは問題解決を諦めてはおらず、むしろ楽観的でさえあるという。実際、世界の取り組みは遅いものの、再生可能エネルギーやバッテリーの価格の急速な低下など、物事は確実に動いており、そのペースは加速しているとする。

 また「人類は絶滅に向かっている」という終末論が一般化したのにはいくつかの理由があり、一つは、大規模なプラットフォームを持つ人々がそのメッセージを発信し、若者にもう手遅れだという考えを植え付けたことだとする。二つ目は、世界の気温上昇を19世紀後半に比べて1.5度に留めるという目標達成ができなければゲームオーバーという認識が広がってしまったことだが、この目標はほぼ達成できないとわかりつつも各国に「より野心的になれ」という気持ちを込めて出されたものだと同氏は指摘。三つ目は、メディアが災害のニュースばかりを報じ、人類の災害への耐性が格段に向上している事実をあまり伝えていないことだとする。

 同氏は、もし10年後に世界が滅亡しなければ、気候変動懐疑派を勢いづけることになり、専門家が世間からの信頼を失い、気候変動への取り組みの障害になってしまうと危惧。必要なのは「気候変動で死ぬ」ではなく、物事はもっと良くなるという楽観的な考えに基づいて行動を起こそうという新しいメッセージだとしている。

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Text by 山川 真智子