若者の心を蝕む「気候不安」 日常生活に負の影響も

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 第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が英グラスゴーで開催されている。未来を生きる若者たちにとって気候変動問題は大きな関心事になっており、現地で対策を求める若者の活動も盛んだ。一方で「気候不安」という恐怖が、彼らの日常生活に負の影響を及ぼしていると報告されている。

◆自然災害深刻、「気候不安」が心を蝕む
 国際ニュース・チャンネルのフランス24は、近年起きている記録的な熱波、洪水、山火事などが人々の生活に甚大な被害をもたらしていると述べ、気候変動が精神衛生に与える影響が最近やっと表に出てきたとしている。

 アメリカ心理学会は、これを「気候不安(またはエコ不安)」と呼び、「環境上の破滅に対する慢性的な恐怖」と定義している。精神疾患ではなく、心の奥底にある不確実性に対する理性的な反応とされ、症状が進むと日常生活に影響を及ぼすことがあるという(同)。

◆大人に裏切られた? 若者は世界的に悲観的
「気候不安」は誰にでも起こり得るが、セラピストによれば、多くのティーンエイジャーが気候変動による災害にストレスを感じており、いつそれが自分たちの身近で起こるのだろうと心配しているという。心配でパニック発作、不眠、吐き気などに見舞われる子供たちもいると述べている(ニューヨーク州のニュース・チャンネル、スペクトラム・ニュース1

 10ヶ国(オーストラリア、ブラジル、フランス、フィンランド、インド、ナイジェリア、フィリピン、ポルトガル、イギリス、アメリカ)の16〜25歳までの1万人を対象にした調査では、回答者の59%が気候変動は「非常に心配」、84%が「少なくとも中程度には心配」と答えた。50%以上が、悲しみ、不安、怒り、無力感、行き場のなさ、罪の意識を感じており、45%以上が気候変動に関する気持ちが通常の行動や活動に負の影響を与えていると回答した。(Preprints with THE LANCET

 回答者は、政府の気候変動への対応に否定的で、安心感より裏切られたという気持ちが大きいとしている。気候変動に関する不安や苦痛は、政府の対応が不十分だと感じること、また裏切られたと感じることと優位に相関しているとされた。(同)

Text by 山川 真智子