「もったいない」以上に深刻な「食品廃棄物」

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 世界の食品廃棄物の問題は深刻であり、地球の環境を守るために取り組まなければならない課題の一つである。食物は人間にとって生きていく上で欠かせないが、生産されるときのみならず、食べられずに処理される際にも環境に負荷をかける。食品を無駄にするとき、私たちは同時に莫大な量の水、土地、お金を無駄にし、地球の環境汚染を引き起こしている。

 食品廃棄物、食品ロス、フードロスなどの言葉が存在するが、意味は少し異なる。「食品廃棄物」は、食品の生産・加工・流通・消費などの際に廃棄される食品の総称として使われ、可食部と非可食部を含む。「食品ロス」と表示される場合は主に、食品廃棄物から非可食部を除いた、食べられる状態であるにもかかわらず廃棄される食品を指す。小売店での売れ残り・期限切れ、生産過程で発生する規格外品、飲食店や家庭での食べ残し・食材の余りなどが主な原因である。「フードロス」の使われ方はさまざまだが、サプライチェーンの上流(生産、加工、流通)での食品廃棄に対して使用されることが多い。

◆地球へ与える影響
 世界の温室効果ガス排出量の推定8〜10%は消費されない食品に関連しており、国連環境計画(UNEP)の食品廃棄物インデックス・レポート2021によると、2019年に約9億3100万トンの食品廃棄物が発生した。この廃棄物の61%は家庭、26%は外食産業、13%は小売から発生している。これは、世界の食品総量の17%が食べられることなく無駄にされていると示唆している。しかし、それにもかかわらず、国連食糧農業機関(FAO)は、2019年に6億9千万人(世界人口の8.9%)が飢えを経験したと推定している。この数字は、新型コロナウイルスによるパンデミックで、さらに増加している可能性があるとも予測されている。

 さまざまな分野の科学者たちが、世界的に人間の食生活を大きく変えなければ地球温暖化を阻止することは不可能であるとしている。同時に、気候変動は世界の食糧供給を脅かしており、土地と水は「前例のない」ペースで搾取されている。地球の環境破壊を止めるためには、2つの最大要因に取り組む必要がある。それは、食品廃棄物と肉の消費量を減らすことである。自然保護における人々の行動変化を促す非営利団体Rareは、家庭でリサイクルを行い、LED照明とハイブリッド車に切り替え、太陽光発電システムを採用したとしても、食品廃棄物の削減と植物性食事に切り替えたときに比べて二酸化炭素排出量の抑制効果は半分以下であると分析している。

Text by sayaka ishida