世界に広がる「宮脇方式」のミニ森林 気候変動に緑化で貢献

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◆気候変動への切り札? 都会にミニ森続々
 野生生物学者のエリック・ダイナースタイン氏は、壊滅的な気候変動を避けるには地表の半分を保護する、または自然保護のために管理する必要があるとする。都会に連続したミニ森林のリボンが生まれれば、昆虫が育ち、渡り鳥も引き寄せられ、生態系を取り戻せるという考えを示している。(ガーディアン紙)

 実際に、オランダのワーゲニンゲン大学の研究者たちが新しく作られたミニ森林をモニタリングしたところ、近くの森林に比べて生物多様性が増加していることがわかったという。この研究を主導した生態学者は、若くて開放的な森林は、花を咲かせる植物により多くの太陽光を届け、花粉を媒介する昆虫を引き寄せたとする。さらに、複数の種を植えたことが多様な昆虫や動物のための食べ物や避難場所を提供することにつながったと説明している。(同)

 リッチモンド・ニュースによれば、欧米では都市のポケット型森林に注目が集まっている。オランダでは2015年に最初の小さな森が作られ、現在は国内約100ヶ所に拡大している。ベルギー、アメリカでは2016年に、フランスも2017年に宮脇方式の植林がスタートし、ボランティアの手で次々と木が植えられている。

◆森作りで起業も インドの都市問題解決を目指す
 宮脇方式の森が大きな成功を収めているのはインドだ。サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)によれば、2008年に宮脇氏の講演を聞いた若いインド人エンジニア、シュベンデュ・シャルマ氏がミニ森林に魅了され、当時の職場だったトヨタのバンガロールの施設で森を作ることに協力を申し出たという。宮脇方式を学び手順を確立した彼は、2011年に森作りのノウハウを提供する会社Afforesttを設立。これまでにインドだけでなく世界13ヶ国56都市で160の森を作ったということだ。

 宮脇方式は、インドでの二酸化炭素の排出、土壌侵食、生物多様性の喪失につながる森林伐採の問題の解決策の一つとなっている。インドの混雑した都市では緑のカーテンがなくなり、ヒートアイランド現象が起こっている。森を作ることで、二酸化炭素の吸収率を高め、土壌の養分を増やし、気温を下げ、鳥たちを呼び戻すことができる。さらに、森作りのプロジェクトを拡大することで、長期的な雇用機会を生みだすことも期待されている。(SCMP)

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Text by 山川 真智子