温室効果ガスを除去する布看板、独で登場 壁面緑化に代わる?

◆ヒートアイランド現象を軽減
 開発は、ドイツのアーヘン工科大学繊維技術研究所、同研究所で研究を続けている建築家Jan Serode氏、ファサードテクノロジーの専門家、医薬業界などが共同で行った。同市の大手不動産業ECEが資金援助しており、モノクロの看板は同社所有のビルでの実証実験だ。ECEはサステナブルな建物の開発に力を注いでいる。

 看板の布地には、ポリエステル繊維を使用するという。耐久性はどれくらいなのか。筆者の問い合わせに対し、Serode氏は「ポリエステル繊維の平均的な耐久年数は15~20年ですが、大学の研究所でも実証実験においても空気清浄作用のある布がどれくらい長く使えるかは、はっきりしていません」と話した。

 また布地の色に関しては、「このテクノロジーは色に影響されません。実証実験ではECEの要望があり、シンプルかつモダンなデザインがよいとのことでモノクロにしましたが、思いつく限りの色、そして好きなデザインにすることができます」との回答だった。

 また、この看板はヒートアイランド現象の軽減にも貢献する。看板が外付けブラインドの役目を担って太陽熱が外壁に直接当たらず、看板と外壁との間には隙間があるため通風が確保される。建物の熱放出が大幅に抑えられる上、エアコンの使用が控えられればエアコンの排熱量も少なくできる。

 なお、写真でもわかるがこのファサードは半透明のため、窓を通して自然光は室内に届く。中にいる人たちは暗過ぎない空間で快適に過ごせる。

「実証実験は、防災規則も含めドイツの建築基準をすべて満たしました。先日、実験期間が終了し、1年間のモニタリングで集めたデータを近いうちに公開する予定です。商用化を始める時期に関しては、そのときにお伝えできると思います」(Serode氏)

 エコ、景観、使い勝手の3点が評価できる新しいファサード看板は、将来、ドイツで広まっていくかもしれない。

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Text by 岩澤 里美