温室効果ガスを除去する布看板、独で登場 壁面緑化に代わる?

 CO2削減や都市におけるヒートアイランド現象の緩和ができる屋上・壁面緑化は、日本でも広まっている。2017年までの過去の施行面積を見ると、屋上緑化は住居をはじめ、教育文化施設、商業施設、医療福祉施設、工場や倉庫など比較的均等に行われている一方、壁面緑化は商業施設が全体のほぼ3割を占め、工場や倉庫、教育文化施設が続く。建物の緑化は景観もより美しくなり、心理的によい効果も期待できるが、潅水設備の管理費用がかかったり植物が建物にダメージを与えることもあり弱点も見られる。

 世界でも屋上・壁面緑化の事例は多いが、緑化ではない、新しいファサードで大気汚染を改善していこうというアイデアがドイツで形になりそうだ。

◆エコ効果がある布のファサード看板
 昨年2月、ハンブルクの交通量が多い地区の建物の壁に、モノクロの縦長看板が取りつけられた。そこには「ここできれいな空気が作られます。ハンブルク初、布製の空気フィルターです」の文字が見える。一見すると普通のファサード看板だが、このビジョンが示すように、実は窒素酸化物を吸収する機能が備わっている。

 通称ノックス(NOx)といわれる窒素酸化物には、いくつか種類がある。たとえば、一酸化窒素は自動車の排ガスや工場の煙に含まれている。一酸化二窒素は温室効果ガスの一つで、CO2の約300倍の温室効果がある。ノックスは光化学スモッグの原因になって目やのどの痛みなどを引き起こしたり、酸性雨の原因にもなっている。CO2とともに、ノックスの排出量削減も地球環境の課題なのだ。

 ここに着眼したのがこの布の看板だ。布の表面には光触媒コーティングが施されており、ノックスが布に付着して日光(太陽光だけでなく電灯も可)が当たると、酸化プロセスにより少量の硝酸塩に変わる仕組みだ。ナノサイズのチタン粒子でコーティングしてあるため、ノックスをより効果的にキャッチできる。雨が降ると雨水でその塩が流され、自然のサイクルへと戻っていく。この雨水は無害のため、植物の水やりに利用することもできる。看板の設置や取り外しは簡単で、ビル以外にスタジアムなどでも使える。

 光触媒コーティングは外壁や窓に直接施すのは日本でもお馴染みで、現在はコロナ禍の抗菌・抗ウイルス対策の一手段として室内や車内にも行え、注目を浴びている。

Text by 岩澤 里美