CO2排出ゼロ、水から水に戻る「水素エネルギー」「人工光合成」は夢ではない

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◆「人工光合成」は目前
 現在、「人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)」という国家的プロジェクトも動き出している。そのARPChemと新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2020年5月29日、信州大学、山口大学、東京大学、産業技術総合研究所と共同で、紫外光領域ながら世界で初めて100%に近い効率で、水を水素と酸素に分解する粉末状の半導体光触媒を開発したと発表した。紫外光ではなく太陽光を光触媒が吸収し、水を直接、水素と酸素に分解する「人工光合成」技術の実用化が現実的になってきたといえる。

 上記の研究機関は、水から製造する水素と発電所や工場などから排出するCO2を原料として炭素数が2~4のエチレン、プロピレン、ブテンを合成する方法をすでに研究開発中だ。効率の良い「人工光合成」の実現を期待したいところだ。

◆まとめ
 水素によるエネルギー獲得手段は、現状ではコスト競争力はないかもしれないが、いまから投資しておくことは、中長期的に我が国にとって大きな財産になるだろう。政府は、2017年に策定した水素基本戦略を前倒しして、2030年に水素利用量を30万トンから1000万トンに引き上げる調整に入ったとのこと。この計画をさらに進めるべきだろう。

 太陽光と光触媒により、水を水素と酸素に分解、それらを使って電気を発生、出てくる水をまた分解。この過程でCO2は未発生、水がリサイクルするだけだ。究極の再生可能エネルギーがそこまで見え始めている

 化石燃料で発展してきた人類の歴史が、新しいエネルギーの出現により塗り替えられるような時代が到来するだろう。正しく、農業、産業、情報に次ぐ第4の革命の時代が到来している。

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Text by 和田眞