人類の歴史が変わる? 化石燃料社会から脱炭素社会へ
◆再生可能エネルギーの利用拡大を
「温室効果ガス2050年実質ゼロ」の実現には、飛躍的な技術革新が欠かせないが、まず当面できるものから始めるべきだろう。
我が国のCO2の4割は発電部門から排出される。そこで家庭の電気消費量を削減すること、そして自家用車を控えて公共交通機関を利用すること、ごみを削減することなどは個人でもできることだ。その上で、大型ビルや工場などの電気消費量を削減すること、大量にCO2を排出する工場などの規制が必要であり、太陽光、風力、水力などの再生エネの量を増やすことが求められる。風力発電は、再生エネの主力電源の切り札だ。政府は、2040年までに3000万kW(大型火力30 基分)~4500万kWを実現し、国内調達率60%を目指している。
欧州連合(EU)で2020年、再生エネによる発電量が初めて化石燃料を上回り、総発電量の38%(前年比4ポイント増)となった。ちなみに化石燃料による発電量は3ポイント下がり37%だった。再生エネ発電の比率が高かったのはオーストリアで79%、以下、デンマーク78%、スウェーデン68%、ドイツは45%。
そのドイツで新たな動きがあり、日本にも参考になる。ドイツ4大電力会社の一角、RWE(炭田で有名なルール地方に本社、欧州最大のCO2排出企業で環境団体から批判)が、2030年には再生エネを発電量の65%以上、従来比率の3倍にする方針を示した。日本の比率は19年度で18%なので、EUと比較していかに低いかがわかる。周囲を海に囲まれ、しかも山岳地帯が多い日本は、再生エネ発電の比率を高めることが重要だ。
経済産業省は2021年度、省庁内で使うすべての電力の少なくとも30%以上を再生エネ、残りを原子力を含むゼロエミッション電源に切り替えると言う。これは、一般家庭の7~8千世帯分に相当し、CO2排出量が減ることになる。環境省も2030年までに使用電力をすべて再生エネに切り替える方針を2019年に率先して示している。
大手不動産会社は、所有するオフィスビルの電力を、通常の電力より1割高いが、一斉に再生エネに切り替えると言う。三菱地所によれば、所有ビル(丸の内界隈30棟)の2019年度の使用電力は約4億キロワット時で、家庭ならば10万世帯強に相当し、CO2排出量は約20万トンだった。
オフィスなど業務部門の脱炭素化は工場のような産業部門に比較して遅れ気味だ。CO2排出量を1990年度と2019年度を比較すると、業務部門は1.3億トンから1.9億トンに増えているのに対して、産業部門は5億トンから1億トン超減っている。