「新型コロナよりも気候変動」島嶼国などが国連で警鐘

AP Photo / David Goldman

 波乱続きの年となった2020年。9月下旬に国際連合の年次総会が開催され、各国指導者のなかからは、「COVID-19の危機を乗り越えることができたとしても、気候変動の危機は乗り越えることはできないだろう」という長期的視点から警告する声が上がった。

 今年、シベリアの気温は記録史上最高を更新。グリーンランドとカナダでは、氷冠から巨大な氷の塊が海に流出しており、各国は、地球温暖化に効くワクチンなど存在しないという現実を突きつけられている。

 フィジーのフランク・バイニマラマ首相は、アメリカ西部の山火事を例に挙げたほか、グリーンランドの氷の塊が、多くの島国を超える巨大さだったことを指摘し、「環境問題のハルマゲドンはすでに起こっています」と述べている。

 バイニマラマ首相は、「私たちの惑星を取り戻す年にすべきだった」と言う。ところが新型コロナウイルスのおかげで、今回の国連総会の大きなテーマとなるはずだった問題にはリソースがまわらず、注目度も下がってしまった。また、国連の地球温暖化サミットは、2021年下旬に延期が決まっている。

 このような状況下、少しずつ水没が進んでいる島国から乾燥地帯のアフリカ諸国にいたるまで、さまざまな国が臆せず意見を表明した。

 小島嶼国連合と後発開発途上国グループは、「世界が現在の方針を変えないのであれば、75年もすれば多くの加盟国が国連を抜けるでしょう」と忠告している。

 2015年パリ気候協定がおもに掲げる目標は、世界の気温上昇を、産業革命前の水準よりも2℃以下に抑えることだ。しかし科学者らによると、世界的にそれを上回る傾向にあるという。新たな研究の結果、世界の気温がここから0.9℃上昇すると、西南極の氷床の融解は回復不可能な段階まで進むことがわかった。これは、地球の水位が5メートル上昇する量の水に相当する。

 太平洋に位置する国、パラオでは、新型コロナウイルスの感染者は1人も出ていない。同国のトミー・E・レメンゲサウ・ジュニア大統領は、パラオを滅ぼすのは海面の上昇だと警鐘を鳴らす。

 レメンゲサウ大統領は、ウイルス拡散防止に向け世界各国で行われたロックダウンの後、空にきらめきが増したことを指摘し、「今年の炭素排出量は瞬間的に減少しましたが、だからといって世界規模での進捗について、微塵も慢心してはいけません」と警告した。規制が緩和されれば、汚染は再び広がる。

 レメンゲサウ大統領は世界の大国について、経済がボロボロになっていたとしても、パンデミックの渦中にも気候変動対策に対する財政支援を放棄することは許されないと主張している。

 しかし国連総会では、中国が2030年までに同国の二酸化炭素の排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を発表したものの、そのほかに宣言された公約はわずかだった。

 パンデミックの影響を受け、各国の指導者はニューヨークの演壇に立つことなく自宅から動画で参加していたため、国連総会は活発な議論の場とはなり得なかった。外交関係の緊迫感があまり感じられず、どの国の指導者にとっても、どれだけの人が話を聞いているのかわからないというような状況だった。

 世界の注目が薄れることを危惧し、9月下旬、学生主導の運動「フライデー・フォー・フューチャー」が、気候行動に関する大規模デモ活動としては数ヶ月ぶりに街頭に戻ってきたことも、納得である。

 しかし島国諸国は、危機に瀕している実状を見てもらうべく、この異常事態を上手に活用した。

 ツバルのカウセア・ナタノ首相は国連総会で、ターコイズブルーの海の景色と、風に揺れるヤシの葉を背景にスピーチを披露し、自宅から視聴する人たちのイマジネーションを即座にかきたてた。

 しかし、ナタノ首相はそのような夢想をあっという間に打ち砕いた。ツバルは新型コロナウイルスの感染は免れているものの、2つの熱帯低気圧による被害を受け、復興を進めている矢先にパンデミックが発生したのだ。科学者らはこのような熱帯低気圧について、地球温暖化が進むにつれて雨量が増す可能性が高いと指摘している。

 ツバルでは、最も標高が高い地点でも海抜数メートルの高さしかない。ナタノ首相によると、海面水位の上昇にともない、同国の農業が厳しさを増しているなか、パンデミックで物流に被害が及んだことにより、食糧不足が発生した。

「新型コロナウイルスは差し迫った危機ですが、長い目で見れば、気候変動は太平洋とそこに住む人々の暮らしや安全、福祉を脅かす最大の脅威であり続けています」と、ナタノ首相は述べている。

 同じく新型コロナウイルスの感染者が出ていないマーシャル諸島からは、デービッド・カブア大統領がウイルスの件を例に出し、いまこそ支援を強化するよう呼びかけた。

 カブア大統領は、「変化が起こるかどうかは、最も脆弱な人々を守れるかどうかにかかっています。パンデミックと戦う医療従事者も、気候変動に警告を発している小さな島国も、最前線で戦う人々は、私たち皆が生きていくうえで不可欠な存在なのですから」と述べている。

 同氏は続けて、「我が国のように小さな島国である環礁諸国には、書面で約束を交わしているような時間はありません」と訴えている。

 切迫した願いの声は、アフリカからも届いた。アフリカは、地球温暖化への関与は最も小さいにもかかわらず、それにより被る被害は最も大きい。

 世界平均の1.5倍の気温上昇が予測されているサハラ砂漠の南部、サヘル地域に位置するニジェールのイスフ・マハマドゥ大統領は、「自然への敬意に基づいた解決策を支持することで、国民の健康を守ることにもなります」と主張している。

 ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は、「神から与えられた大小さまざまな数百万種の生き物で満ち溢れている地球という家は、少しずつ死に近づいています。私たちの世界は、滅亡を食い止めてほしいと訴えています」と述べている。

 同氏は昨年、ケニアがアフリカ諸国のなかで唯一、国内のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合を75%にするという目標を達成したと発表した。

By CARA ANNA Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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