弓矢とスマホ、アマゾンの先住民・テンベ族の知られざる生活

AP Photo / Rodrigo Abd

 彼らは弓矢で狩りをし、ピラニアを獲り、野生植物を収集する一方で、テレビのメロドラマを楽しみ、わらぶき屋根の小屋の中で携帯電話のインターネット情報をチェックしている。

 植物の種子から抽出した染料を顔に塗って戦いに備え、ビデオ技術を用いて不法伐採者などの脅威と戦う。

 ブラジルのアマゾン熱帯雨林奥地の先住民族、テンベ族。彼らの村では、伝統と現代性が融合した生活が営まれている。

                                                                                                                 

 朝は泥で茶色く濁った水を浴び、午後になるとヨーロッパのサッカーチーム(チェルシーなど)のジャージを着て砂浜でサッカーを楽しむ。

 彼らが暮らすブラジルのパラ州は森林伐採と数千回もの山火事に見舞われており、テンベ族は違法業者による森林伐採の様子を写真や動画で撮影し、それをSNSでシェアしている。また、彼らは最近になって非政府団体と面会し、持続的に森を守ることを交換条件に、ドローンや侵入者追跡用のGPSデバイスを提供された。先祖代々、彼らは世界最大の熱帯雨林を保護することの価値を子供たちに伝えるため、植樹を続けている。これは地球温暖化に抗うための重要な防波堤だ。

 テンベ族のシダリア・テンベ氏はテコホー村の裏庭で「私は子供たちにこう伝えています。私はあなたたちのために木を植えました。今度は、あなたが自分の子供たちのために植える番です、と」と語る。彼女はここで果物や野菜、薬草を育てている。

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「ここにあるのは私たちの家庭薬です。私たちは街の薬局に行くのではなく、自分たちで薬を作っています。こちらのほうが信頼できるので」と彼女は言う。

 さらに彼女は、自身の子供がそれぞれ丁寧に育てたサトウキビ科の植物4種と、アボカドやココナッツ、レモン、アサイーなど、ブラジルの朝食の定番であるビタミン豊富なアマゾンのベリー類について、誇らしげに紹介した。

「ここは楽園です。我々は車を持たないので、排ガスもありません。昼間の街は暑すぎます。ここでなら安心して過ごせますし、騒音もありません」と夫のムティ・テンベ氏も言う。木の上で鳥がさえずると、「聞こえるのは、鳥の声だけです」と加えた。

 植樹されたうちの1本は、テンベ族の首長にしてテコホー村の創始者である、ムテ氏の祖父が植えたものだ。部族のメンバーは何世代にもわたり、祝い事があると、この夫婦の庭にあるジェニパポの木から黒い染料を抽出して自分の体にペイントをほどこしてきた。

 成人になるための通過儀礼は数日続くこともあり、その間人々は猿や鳥を獲って調理する。成人する若者が跳びはねて歌い、鳥のさえずりをまねた声を発すれば、ほかの面々は共用小屋の中で床を踏み鳴らし、ガラガラと楽器を鳴らして盛り上げる。

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 人口約2,000名のテンベ族は先祖代々、アルト・リオ・グアマ(面積約2,766平方キロメートル)の地で暮らしている。市街地からは、船や舗装されていない道路を延々と旅して、やっとたどり着ける場所だ。数十名から数百名からなる村が、グアマ川やグルピ川に分断されるようにして点在する。先住民族の居住区は公式に保護されているものの、貴重な広葉樹を不法採取しようとする伐採者が常に包囲している。
 
 面積の60%がブラジルに属するアマゾン熱帯雨林には、地球の植物種の20%もが生育しており、ここでしか見られない種も多い。

 ブラジル宇宙機関の衛星データによると、過去1年間で森林破壊や森林火災が急激に増加していることがわかる。同機関は8月、アマゾンでの火災発生件数が、2018年の同時期(1月から7月)と比較して、84%も増加したという警告を発表した。

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 今年になって極右派のジャイール・ボルソナーロ氏が大統領に就任し、自然保護区および先住民居住区の保護を緩和すると発表して以来、アマゾン熱帯雨林への懸念が高まっている。

「私たちが呼吸できるのは森のおかげです。それを守るために戦わなければなりません」と語るのは、カ・ア・キルという小さな村のグレイソン・テンベ氏だ。村の名は、彼らの言葉で「緑のジャングル」を意味する。

「アマゾン、そして自然は私を育ててくれた母なる存在です。森で育った動物たちは、私たちに力をくれます。私の子供たちは自然の食品だけを食べ、それらはすべて森で生まれたものです」と彼は言う。「森を切り払うなんて、あり得ないでしょう」

 隅の方では、レンガで囲んだグリルを使って彼が魚を天日干ししていた。家の中では、彼の子供や甥たちが紫色のハンモックの上に集まり、携帯電話でYouTubeの子供向けアニメを鑑賞していた。その後、森の中で短時間トレッキングしていると、彼の娘エミリア(7歳)さんが燃えた倒木に登り、枝で作った自作の弓矢を構えて見せた。

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 エミリアの祖父で、この村の名付け親でもあるカ・ア・キル族長のエミディオ・テンベ氏は「この一帯はかつて原生林だった場所です。原生のジャングルだったのです。それが火災で、全部やられてしまいました」と話す。

 先日、手作りの木細工を売るため、州都のべレンで開かれたブック・フェアを訪れたエミディオ氏は「私たちがここで一番心配しているのが食糧、木の伐採、そして火事です」と語る。

「私たちは森の魚や鳥たちを食べて生きていますから、不安なのです。私たちにとっては、鳥のさえずりや動物の鳴き声を聞きながら、これからも森にいられることがとても大事なことなのです」

By LUIS ANDRES HENAO Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP