ネパール、滞るLGBTの権利平等化 憲法で性的少数者への差別禁止も

AP Photo / Niranjan Shrestha

 ネパールは4年前、性的指向を理由とするあらゆる差別の禁止を規定した新憲法を公布し、性的マイノリティの権利の平等化に関しては南アジアの最先端を行く国となった。いまでは市民権証明書やパスポートでも「男性でも女性でもない」という選択肢を選べるようになっている。

 しかし、ニラージ・スヌワール氏とアーシク・ラマ氏をはじめとする同性カップルは新憲法が採択されて以降、平等化の取り組みが失速していると主張する。

 23歳のスヌワール氏と28歳のラマ氏は、法律上結婚できる日をいまもなお待ち続けている。ラマ氏には養子を迎えたいという希望もあるが、現状ではそれを認める法律が存在しないため、実現できない。

                                                                                                                 

「私たちの望む暮らしを堂々と送れるように、ちゃんとした役所で婚姻の手続きをし、公的な証明書をもらいたい。そして赤ちゃんを養子に迎え、家族として暮らしたいのです」とラマ氏は言う。

 ネパールでは2008年、最高裁判所が性的マイノリティに対するあらゆる差別を法律上禁止するという決定を下したことから、何世紀にも及んだ君主制の廃止後に発布された新憲法に上記の権利が定められた。しかし、LGBT活動家らによると議会はまだLGBTの権利を盛り込んだ新たな法律を作成していない。

 さらに事態を悪化させたのが、昨年議会を通過し施行された民法だ。この民法に、結婚とは男女が結ばれることだと明記されたため、状況はいっそう厳しさを増した。

 LGBTの権利団体ブルーダイヤモンド・ソサエティのエグゼクティブディレクター、マニーシャー・ダカール氏は、「ネパールが道を切り開きほか、他の国々がそれに続いているのに、ここにきて歩みが失速しています。議会は何の動きも見せません。単にやる気がないのです」と言う。

 新憲法では性的差別の禁止に加え、公務員や教職の枠を一定数確保するなど、マイノリティに特権を付与することも規定されている。LGBTはマイノリティと位置づけられてきたが、このような特別枠は一切設けられていない。
 
 LGBT活動家のピンキー・グルン氏は、「性的指向を理由とした差別があってはならないと憲法に明記されているにもかかわらず、それを認める法律が存在しない」と言う。

 ダカール氏によると、議会で準備中の新たな市民権法案では、身分の変更を希望するトランスジェンダーに対し、医学的な根拠の提示を義務づける方針だが、何を根拠とするかは明示されていない。

 同氏は「身体検査を義務づける条項は、プライバシーの侵害にあたります」と述べた上で、現在のネパールでは性転換手術を受けることができず、ほとんどのトランスジェンダーが手術費を工面できないでいると指摘する。

 ダカール氏によると、活動家らは裁判所で権利の平等化を要求した後、国際的な人権グループにも問題を提起し政府に圧力をかけようとしている。

 ネパールの新憲法は、同国のみならず南アジアの先端をいくものだった。

 インドでは昨年、最高裁判所がイギリス植民地時代の法律を違憲と宣言したが、それまで同性愛は認められていなかった。小国ブータンの議会は最近になってやっと「自然に反する性行為」を違法とする条項を破棄した。

 一方、イスラム教徒がマジョリティを占める国家、バングラデシュとパキスタンでは、同性同士の交際はいまも違法とされており、同性愛者の人権活動家は日々差別に直面している。

 新憲法に従いLGBTの権利が確立していれば、ネパールはアジア全域でもほぼトップを走る国となっていただろう。5月、台湾が同地域で初めて同性婚の合法化を果たした。

 ネパールのLGBT人口については、正確な数はわかっていない。国勢調査は10年に1度実施されているが、次回調査は2021年に予定されており、グルン氏によると活動家らがLGBTの人口もカウントするよう働きかけている。

 国勢調査のデータがないため、企業などの雇用や教職、医療職にLGBT枠は設けられていない。そして活動家らの訴えによると、ネパールではいまもなおLGBTに対する差別が日常的に行われている。

「ネパールには同性婚を認める法律がないため、数々の困難に直面してきました。男性2人が恋人として同棲しているという理由で、表を並んで歩けば近所から軽蔑の目を向けられます」とスヌワール氏は言う。

 2人は同居を始めて2年になるが、その事実をそれぞれの両親に告げたのはほんの数ヶ月前のことだった。カトマンズの観光地中心部で初のLGBTフレンドリーなレストラン、ピンク・ティファニーを経営しているメグナ・ラマ氏は、毎日のように困難を乗り越えてきた。

 ビルのオーナーを説得したり、役所や客からの嫌がらせに耐えたりと、経営を始めてからの2年間は厳しい道のりだった。ピンク・ティファニーがLGBTフレンドリーを売りにできるようになったのは、つい最近のことだ。

「誰もが来店でき、誰に対しても差別がなく、誰ひとり軽蔑も批判もされない場所となるよう願ってピンク・ティファニーを開店した」とラマ氏は言う。 

 当局によると、ネパール政府は同性婚の実現性をまとめたレポートを審査するとともに、同性婚を認める新たな法律を検討中だ。

 女性・子供・高齢者省のバーラト・ラージ・シャルマー氏は、「歩みは遅いものの、政府は取り組みを進めています。先に片づけなければならない厄介な問題が山ほどあるのです」と述べている。

 同氏によると、新民法と市民権法案のおかげで今回の問題がいっそう複雑化しており、その他省庁と協力して解決を目指している。

 しかし、活動家らは納得していない。

「ネパールの新しい法律、規則には、憲法の性的マイノリティに関する記述が何も反映されていません。こうして政府や政治家が私たちの辛い状況を無視していることを、悲しく思います」とダカール氏は述べている。

By BINAJ GURUBACHARYA Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP