「グリム童話の森」が危機……環境問題の議論が活発に ドイツ

Oliver Berg / dpa via AP

 古くからドイツ人にとっての誇りであり、国を象徴する森がいま、暑さに弱っている。

 異常な乾燥と暑さが2年続き、立ち枯れた木や弱りきった木が帯状に広がる事態となった。グリム兄弟が生み出した多くの童話に登場する森が、悲しい結末を迎えることも起こり得ると不安がかき立てられている。

 当局によると、日照りや山火事、蔓延する甲虫によって、ドイツでは2018年に11万ヘクタールの森が破壊された。2019年は被害がさらにひどくなる可能性もあるという。

                                                                                                                 

 立ち枯れた木が広がる風景を目の当たりにし、気候変動が及ぼす影響についての議論が白熱している。そして、地球温暖化に適応し、また阻止するため、先進工業化の進んだこの国が講じるべき政策についての論争も巻き起こった。

 公共放送局の第2ドイツテレビが8月9日に行った世論調査により、ドイツ人回答者の62%が、気候変動をもっとも差し迫った問題、もしくはほかの課題よりも緊急性の高いものと考えていることが明らかになった。

 また、気候変動への取り組みが政治的志向を問わず国民から広く支持される一方で、環境政党「緑の党」が得る利益は多いようだ。第2ドイツテレビによる調査結果では、総選挙が行われるとすれば、緑の党の得票率は2017年の倍以上である25%となることが示された。8月6~8日に行われた電話調査では、選出された1,307人が回答対象となったが、最大3%の誤差を含む結果となった。

 緑の党は、ドイツの森が酸性雨による被害に見舞われていた40年前に設立された。その後、現政権下で連立政権を担う、アンジェラ・メルケル首相率いるキリスト教民主同盟と中道左派の社会民主党に圧力をかけ、温室効果ガス排出を抑制するための抜本的な対策を求めてきた。

 メルケル内閣は、9月に一連の政策に合意することを約束し、回答を示した。炭素税、もしくはそれに相応する税収制度の導入や、飛行機での国内移動を削減するための鉄道乗車券への減税措置などが含まれる見込みであるが、ブラートヴルスト(ソーセージ)など肉類の価格を引き上げる提案は即座に却下された。

 保守派で知られるバイエルン州首相は、ドイツ国内にある石炭火力発電所の閉鎖期限を早めること、また気候保護をドイツの憲法に組み込むことを提案した。

 8月初め、キリスト教民主同盟に所属する森林管理局担当大臣は、衰退した森林の修復と、さらに温暖化が進む今後の環境に適応させるための費用として、今後数年間で10億ユーロ(約1,184億円)が必要であると訴えた。

 その一方で、強硬派の環境保護活動家は、ドイツ西部にある古代の森が、近くの鉱山により破壊される危機に直面していることをめぐって継続中の議論があると指摘している。

 ハンバッハの森は、公益事業の最大手エル・ヴェー・エー(RWE)社が運営する大型露天採掘鉱山の傍らに広がっている。2038年までに国内での石炭の利用を廃止するという専門家からの提案が政府に承認され、森は守られることになった。しかし、環境保護活動家によると、RWE社が貴重な地下水を汲み出すことで森が残したものが危険にさらされているという。

 気候変動への対策を求めるスウェーデン人活動家グレタ・トゥーンベリさんは8月10日、ハンバッハの森を訪れた。環境保護活動に抗議する人々と対面し、「自然との闘いに今日、終止符を打たねばならない」と訴えたと、活動家団体「物語の終わり(End Of Story)」は声明のなかで述べている。

 16歳のトゥーンベリさんが率いる抗議運動は、ヨーロッパ中の何万人もの学生を毎週動員し、地球温暖化へのさらなる対策を首脳陣に訴えてきた。鉱山を見ると心がひどくかき乱されると話すトゥーンベリさんは、話し合いではなく行動を起こすべきときが来たのだと言う。

 トゥーンベリさんは14日、ニューヨークで開催される国連気候サミットに出席するためにヨットで英国を出発した。2019年3月、ドイツのメディアから授与された賞を「ハンバッハの森を守る人々と、化石燃料を世界各地の地中に留めておくために闘う、気候変動への対策を訴える活動家たち」に捧げた。

 メルケル首相は、トゥーンベリさんと支持者である多くの若者からの圧迫感は認めたものの、「我々もまた新たな方向に進んでおり、言うまでもなく、この進むべき方向性については熟考されなければいけない」と釘を刺した。

 専門家は、政府がどの方向に進もうと、ドイツの森は変化を強いられるだろうと述べる。

 ドイツのチューネン森林生態学研究所長、アンドレアス・ボルト氏は、かつてドイツを代表する樹木であったトウヒは、ここ数年の間、上昇する気温による被害を受けてきたと話す。

「実際に各地でブナノキに発生した問題が、今年はトウヒに起きているのです」とボルト氏は述べ、マツやオークにも被害が生じ始めていると警鐘を鳴らす。

 ベイマツのように、耐暑性が強く高地でも力強く育つ樹木を在来種に置き換えることができればと、自然科学者たちは願っている。

By FRANK JORDANS Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP