絶滅に向かうキタシロサイ 体外受精は救済手段となり得るのか

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 しかしながら、現時点では、この提案は仮説的なものにすぎない。科学者たちは、実験過程のために卵子を採取する許可をまだ得てはいないが、2018年内にはケニア政府より許可が下りることを期待している。

 体外受精の、複雑で生体内に傷をつける可能性のある方法については、これまで多くの論争を引き起こしてきた。一例として、科学技術には費用がかかることが挙げられる。専門家によると900万米ドルものコストがかかると見込まれている。現在生存している健康なサイを保護するために資金を利用することより、すでに絶滅の危機に瀕している種を救うためにそのような巨額の資金を投じることについて、その実用性に疑問を呈する意見もある。

私たちは最後のキタシロサイのオス、スーダンを失ったことに憤激しているわけだが、(いずれ密猟者に殺害されることになる)群れを増やすための体外受精に900万米ドルを調達したいというのは、ちょっと度が過ぎる(と言ったらいいのか)気がする。

これは自然に任せて、他の問題に取り組んではどうだろう。

 活動家団体の「セイブ・ザ・ライノー (サイを守ろう)」は、論争を引き起こしている議論について声明を発表した。

現実的な問題として、体外受精の成功により産まれたキタシロサイは一体どこで暮らせば良いのだろうかという懸念が残る。保護計画やサイの個体数管理に関する専門知識が十分でなかったことや、広範囲にわたる生息地の減少により、シロサイはかつて生息していた多くの地域から姿を消していった。サイの生息個体数を遺伝子学的にとにかく存続させるためには、最少でも20頭の、血縁関係のない「始原となる個体」が必要である。そうでなければ、個体群は近親交配が避けられず、遺伝子学的な異常をもつこと、さらには生殖能力に問題のある傾向となる。

 キタシロサイ(シロサイの亜種)はかつて、ウガンダやチャド、スーダン、中央アフリカ共和国、そしてコンゴ民主共和国周辺を自由に歩き回っていた。しかし現在では、数年に及ぶ密猟や内戦の影響を受け、野生絶滅の状態にある。

 主に角に対する需要にあおられ、サイ全体の個体数は、種にかかわらず近年著しく減少をたどってきた。アジア諸国の中には、サイの角が解熱や心臓病に効用をもたらすと信じる人々がいる。他の地域においては、サイの角は富の象徴であると考えられている。

Text by Global Voices