地球を救う? 牛排出のメタンを減らす海藻、量産化に取り組む米企業

Josh Goldman / Green Grazing via AP

 汚い話になってしまうが、牛は必ずおならをする。しかし飼育場で海藻を利用できるようになれば、牛が放出するガスが地球に及ぼす悪影響を少し緩和できるかもしれない。

 これは海藻を牛の餌とすることで気候変動を阻止するという、世界に先駆けて新たな取り組みを開始したニューイングランド地方のとある水産養殖会社が掲げているテーマだ。

 海藻を餌とすることで家畜によるガスの排出を減らすというコンセプトは、科学的に研究が進められているテーマであり、早々に成果を得られるのではと大きな期待が寄せられている。カリフォルニア大学の研究者は、餌として海藻を与えた牛の場合、げっぷやおならをした時に、地球温暖化の一因となる温室効果ガス、メタンの排出量が減るようだとしている。

                                                                                                                 

 しかしこの海藻を使った対策を実施する上で、大きな課題の1つとなるのが、飼育場に十分な量の海藻を届けられるかいうことだ。牛への効果がみられた海藻の種類は、大量生産できるほど養殖されていない。

 例えばマサチューセッツ州グリーンフィールドのオーストラリス・アクアカルチャー社は、この海藻を大量生産可能な規模で生産する初の養殖所となるための取り組みの一環として、ベトナムとポルトガルの施設で研究を進めている。同社のCEOを務めるジョシュ・ゴールドマン氏は、この取り組みを「よりグリーンな牧場づくり(Greener Grazing)」と名づけ、2年以内の大量生産を目指していると言う。

 ゴールドマン氏は、「すべての牛の餌をこの海藻にできれば、道路からすべての車がなくなった場合と同程度の効果があるだろう」と言う。「よりグリーンな牧場づくりのミッションは、これを培養し、この種の海藻を増やしていくことだ」

 問題の海藻とは、カギケノリと呼ばれる種類の紅藻で、世界各地で自生している。今年初旬、カリフォルニア大学デービス校の研究チームが、12頭の牛にこの海藻1種類を与えた結果、その摂取量によってメタンの排出量が24~58%減ることがわかった。

 カギケノリはこれまで、牛の餌の中にほんのわずかな量しか含まれていなかったが、研究者によると、すべての飼育場でカギケノリを利用できるようになった場合、莫大なメタン削減効果を見込めることが分かっている。同大学の話では、牛のげっぷで排出されるメタンは、アメリカにおけるメタン排出量の25%を占める。この海藻は、牛の腸内でバクテリアがメタンを生成する過程を阻害すると、ゴールドマン氏は言う。

 カリフォルニア大学デービス校で動物科学を研究するエルミアス・ケブレアブ教授は、まだ課題があるとしている。この海藻については、さらにテストを重ね、動物の肉やミルクの品質に影響が及ぶかどうか判断する必要がある。

 十分な量のカギケノリを生産するという課題は非常に困難なものであるため、ゴールドマン氏はこれを「水産業界の月面探査ロケット打ち上げ事業」と呼んでいる。ゴールドマン氏は、すべての飼育場で利用できるようにするために必要となる海藻の量は、現在世界で養殖されている量を超えると見積もっている。

 ケブレアブ氏は、「持続的な生産が必要だ。海藻をもっと持続可能な方法で養殖する方法を見つけ出す必要がある」と述べた。

 これがまさに、オーストラリス・アクアカルチャーの進めている取り組みだ。ゴールドマン氏によると、同社はカギケノリという海藻の様々な菌株を収集し、多種多様な気候条件で生育できるように、この海藻の種子バンクを設立した。

 次のステップは、同社の養殖場でこの海藻を繁殖させることだとゴールドマン氏は言う。同氏によると、種子バンクを設立することで、他の場所でも、飼育場の経営者がこの海藻を生育できるようになるだろう。

 オーストラリス・アクアカルチャーの水産上級研究員であるランドール・ブルメット氏は、世界銀行が同社の取り組みに関心を寄せているという。ブルメット氏が言うには、発展途上国でカギケノリ養殖場の規模を拡大することにより、より気候に優しい家畜業を実現するとともに、貧しい国々にとっては経済の成長に繋がる可能性がある。カリフォルニア大学デービス校動物科学学部の教授で、大気環境の推進に関する研究を行うフランク・ミットラーナ氏は、この海藻が牛たちの口に合うかはまだ分かっておらず、海藻を食べた牛からとれた牛乳を、人間が安全に飲めるかどうかも証明されていないと言う。

 ミットラーナ氏は、「もう少し深く考えてみると、これを緩和策として真剣に検討する前に、解決すべき重大な懸念がいくつかある」と述べた。

 飼育場側の同意を得られるかどうかという問題もある。メイン州クリントンにあるフラッド・ブラザーズ・ファームで酪農を営むジェニー・ティルトン=フラッド氏は、これを積極的に取り入れてみたいとは思うが、費用や、手に入れやすさも重要だという。

 同氏は、「家畜にとっての栄養価がなければならない。私たちは、牛にただ食べられるものを与えている訳ではない。ちゃんと牛専用の栄養士を雇っている。もしも本当に海藻を家畜の餌にできるのであれば、それは素晴らしいことだ」と語った。

By PATRICK WHITTLE, Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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