自分はどんな消費者になりたいか 3

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 1973年に生まれた私がティーンになる頃には、日本は高度成長期を経てずいぶんと豊かになっていた。お金があれば手に入れられない物はなくなった。日本人はその後、バブル経済を享受し、贅沢を覚え、ラグジュアリーの概念が社会に浸透した。「もったいない」というコンセプトは「貧乏くさい」ということなり、人は雑巾の代わりにペーパータオルを使い、汚れた物や古くなった物を簡単に捨てるようになった。

 2011年の東日本大震災を経験して、それまでの暮らしに疑問を感じて都会の暮らしを捨てた人もいれば、自らの消費行動を変えた人も多くいる。その一方で、社会のほとんどの場所ではいまだにプラスチックバッグが無尽蔵に配布され、使い捨ての容器が使われている。

 『ヒップな生活革命』以来、消費者と呼ばれる私たちが、どうしたらこれまでのやり方を変えることができるのか、どうしたら環境破壊を減らすことができるのか、どうしたらこの社会をよりよいものにできるのかーーその方法を、衣食住にまつわる行為、そして政治や経済界とのつながりから取材し、考えてきたことをシェアするために始めたこの連載を終えようとするタイミングで、ニューヨークの国連で温暖化対策サミットが行なわれている。

 今この原稿を書いている私のタイムラインは、環境相として初めての国際演説を行ない、化石燃料の使用を減らすと言いながら「どうやって?」と聞かれると黙り込んだ小泉進次郎氏についてのポストと、学業を休んで環境アクティビストとして活動するスウェーデンのグレタ・トゥーンベリ(16歳)についてのポストで埋まっている。環境破壊の進行を許してきた大人たちに厳しい言葉をぶつけるグレタの演説についてのポストには、「政治家や環境団体に操作されている」「子供のくせに」などと酷い言葉があとを絶たない。

 彼女の発した言葉に何ひとつ間違ったことはない。世界を動かす政治家たちが、空虚な言葉を並べながら、世界的な対策を怠ってきたこと。国際社会が温室効果ガスを目標どおりに削減しても、気温上昇を食い止めることができる可能性は50%しかないこと。こうした事実は、科学者たちが30年以上も前から警告してきたはずだということ。そして、今、無限の経済成長が続くかのような幻想のもとに世界を無責任に動かしている老人たちは先に死に、彼女をはじめとする若い世代がそのツケを払うはめになるだろうということ。すべて本当なのだ。

 そして我が国の環境相は、「セクシー」「ファン」と、相変わらずまったく緊急性のない空虚な言葉を並べるだけで、具体策を示すことすらできていない。その一方で、地球の行方を背負うことになる若い世代を代表するグレタが、汚い言葉で罵られている。

 この連載は、私自身がより賢い消費者になるための試みであると同時に、読んでくれる人に、「あなたはどのように生きていきたいですか?」と問いかけるものとして書いた。

 あなたは、16歳のアクティビストの危機感を否定するだろうか。それとも、彼女の危機感を共有するだろうか。

 そして今、あなたはどういう消費者として生きていきたいですか?

【Prev】第33回・自分はどんな消費者になりたいか 2

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Text by 佐久間 裕美子