自分はどんな消費者になりたいか 2

© Yumiko Sakuma

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 この5年ほどのあいだに世の中が大きく変わった要因のもうひとつに、ドナルド・トランプという人物がアメリカの共和党から大統領選に出馬し、勝利して、アメリカ合衆国第45代大統領に就任した、ということがある。

 20人以上の女性からセクハラ、レイプ、暴行などで告発されたトランプ氏が、移民排斥を訴え、宗教的右派・白人愛国主義・至上主義者たちの支持を受けて選挙に勝ち、大統領就任後には、オバマ大統領が敷いた環境規制を次々と撤廃し、大企業寄りの政策を推進している。そのことが、人々の消費行動も含めたアメリカの文化に与えている影響は、計り知れない。

 トランプ大統領が登場する以前から、ミレニアルや若い世代は、ジェンダーやセクシュアリティに対する固定観念が薄く、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア)という既存の区分以上に多様化していることは指摘されてきた。しかし、古典的な結婚観・家庭観の維持を主張する宗教的右派が支持する候補が勝ち、それまで進化してきたジェンダー/セクシュアリティの概念を後退させたことへの反動として、たとえば雇用の保障や差別からの保護といった、性的マイノリティや女性の権利を制限しようとする政権への抵抗運動が苛烈になった。

 トランプ誕生以前にも、デザインやファッションの世界でLGBTQの権利拡大運動やジェンダー観を反映した表現が登場していたけれど、2010年代後半の世の中では、ある意味、トランプ大統領という「悪役」のおかげで、この傾向が一気に加速した感がある。個人のスタイルにおいて「男の物」「女の物」という既存の固定概念を外れた表現や着こなしを見ることが増え、ブランドや企業の側も、こうした傾向に対応するためにユニセックス商品の充実やサイズの幅の拡大などをさらに試みるようになってきた。

 草の根のファッション・ムーブメントの中には、より直接的なアクションに関与する作り手やブランドも増えている。特定のイシューに対するスタンスを商品を通じて表現し、その売上の一部を、その問題に取り組む非営利団体・運動団体に寄付する、という手法が、中小のブランドから大手のファッションハウスまで、幅広く定着するようになった。たとえば、これまでに触れた〈スローファクトリー〉は、展開するすべての商品の利益の一部が、様々なイシューに取り組む運動団体に寄付される仕組みになっている。また、サンフランシスコに生まれ、「価格の透明性」を標榜する〈エヴァーレーン〉は、トランプ政権が発足してイスラム教徒の入国制限を行なったことを受けて2017年夏に、「100%ヒューマン」とメッセージが入ったTシャツを展開した。1枚あたり5ドルを、移民やマイノリティの人権を擁護するアメリカ自由人権協会に寄付するというキャンペーンは今も続いており、これまで22万ドル以上を寄付している。

Text by 佐久間 裕美子

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