ヴィンテージのこと、改めて

© Yumiko Sakuma

 今、ヴィンテージのイベントに行くと、別の時代から出てきたようなスタイルをしたディーラーたちが、この世界のスタイルアイコンとして機能しているのがわかる。それぞれに得意な時代やジャンル、独自の視点があって、リアル店舗やオンラインショップを持ち、ブログやソーシャルを通じて自らがモデルとなってスタイリングを提案する。こういう彼らのおかげで、ヴィンテージのシーンは再び盛り上がりを見せている。

 古着のプロたちが好むボロボロの衣類たちは、ビギナーにはハードルが高いからか、古いものを自分たちなりに修復して着られる状態にしたり、リメイクしたりして売る人たちが登場した。さらには、ヴィンテージの衣類を再構築したり、アンティークのテキスタイルをデザインして商品化するブランドもある。Nepenthesの清水慶三さんによる〈Rebuild by Needles〉、ニューヨークで古いキルトや繊維だけを使う〈BODE〉、ポートランドで日本のテキスタイルを使ったスタイルを提案する〈Kiriko〉などは、土台の素材をまったく違う形に昇華させることで、新たな付加価値を創出している。

 こうした動きが個人経営のヴィンテージショップやインディペンデントのブランドから出てくる一方で、恐ろしい速度で生産される衣類が作り出す問題の規模がこれだけ大きくなった今、新しい商品を売ってなんぼの大手ファッション企業ですら、リサイクルやリユーズを唱えざるをえなくなってきた。リーバイスのRE/DONEというラインや、シアトルの老舗アウトドアメーカー、フィルソンの「Restoration Department」(修復部門)といったプロジェクトのように、長い歴史を持つブランドが、自社の古い商品を回収して修復、またはリメイクして売る、という試みを始めている。この新しい動きは、2000年代におきたヘリテージ・ブームを土台に、ブランド自身が古い物に価値がある、という考え方を認識し、過去に作ったものに責任を持つことが戦略的にも意味を持つ時代がきたことを示唆している。また最近登場したエシカル(倫理的)ファッション(これについては改めて詳しく説明したい)というコンセプトと沿いながら 、「古いもの」を買うことに抵抗のあるメインストリームの消費者の心理的ハードルを下げ、同時に啓蒙する結果にもなっている。

 気がつけば、これまで何度か大小のブームを繰り返してきたヴィンテージが、再び今、注目すべき一大産業に成長しつつある。今回のブームで新しいのは、ヴィンテージ=エシカルという構図が明確に認識され、それをひとつの購買モチベーションとしてヴィンテージを選択肢に入れる消費者が登場しているというところだ。そこには「いよいよ環境がまずいことになっている」という危機感と、トランプ時代になって、着る、食べるといった経済活動の中にも政治的・社会的意識を表現することが「クールなこと」から「マスト」な条件になったという時代のコンセンサスがある。

 自分がずっと好きだった物に対する認知度がこうして上がってきたことをうれしく感じる一方で、これがブームで終わらないことを心から願っている。これ以上、消費を増やす余裕は、もうこの世界にはないと思うから。

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Text by 佐久間 裕美子

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