日本と西アフリカの文化に共通することとは? 美的感覚を融合した作品群「Wafrica」 

2024年6月8日に最終日を迎える、東京都千代田区の丸紅ギャラリーにて開催中の本展「和フリカ ―第三の美意識を求めて―」。

【画像】日本と西アフリカの文化に由来する美的感覚を融合した作品群「Wafrica」

パリを拠点に活動するカメルーン出身の現代アーティスト、セルジュ・ムアング氏が日本で初めて開く個展となったこの展示会には、どのような背景があるのでしょうか。

NewSphereは、セルジュ・ムアング氏に取材しました。

セルジュ・ムアングが日本で初個展

セルジュ・ムアング氏が手がける「Wafrica」という作品群は、日本と西アフリカの文化に由来する美的感覚を融合しています。

一見似ても似つかないように思える2つの文化ですが、公式サイトでは「どちらも自然に対するアニミズム的な見方や高度にマナー化された非言語コミュニケーション、高度に様式化された視覚表現を備えた『超村社会』」と紹介されています。

またムアング氏は、このように話しています。

「氏族や部族といった集団への帰属意識は、日本や西アフリカでは今でも根強く残っています。どちらの文化でも、村長に対する将軍のイメージは残っています。

日本では神道が国教ですが、西アフリカではブードゥー教の実践が中核的かつ鮮明な信仰として残っています。

どちらの実践も、自然に対する態度が採用され、儀式中に魂の位置が変えられることから、アニミズム的です。

これらすべての側面は、私にとって思考の糧であり、さらには創造の糧でもあります」(以下同)

こうした類似性に着目して生まれたのがWafricaです。

日本的美学の象徴としての着物をアフリカの布と組み合わせることで、視覚的に美的対比を表現する試みとしてWafricaはスタートしました。

そのビジュアルの説得力から制作の規模は迅速に広がり、日本では2008年より展開されました。

今回の展示会に至った経緯としては、2017年にパリの大西長利展のミゼンアートギャラリーにて、丸紅ギャラリー館長である杉浦勉氏との出会いがきっかけでした。

その後、Wafricaは2020年パリ日本文化会館での個展開催や、2020年から2024年にかけてロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館、ヨーテボリの国立世界文化博物館、チューリッヒのリートベルク美術館、パリのケブランリ美術館などでの展覧会を経て、世界中さらの注目を集め続けています。

Wafricaが重視する「第三の美意識」

Wafricaを語る上で大きなキーワードとなるのが「第三の美意識」です。

日本文化と西アフリカ文化、それぞれの中だけでは決して見出されることのなかった新しい美意識。

「Wafricaは2つの文化の共通理解によって推進される、ユニークで本物かつ文化的に推進される第三の美的感覚を生み出したと私は信じています。

Wafricaが人々を魅了するのは、それぞれの文化を深く尊重し、美的に超越しているからでもあります。第三の美意識は、最も明白な視覚的結果をもたらしながら、対話と調和の魔法を表現します。

この美学道は、これまで芸術の歴史において探求されたことはありませんでした」

文化の融合による第三の美意識の創出が高い評価を受けているWafrica。

一方で、ファッションやアートの分野における文化盗用の問題は世界中で議論されています。

融合と盗用、この2つを画すものは何か。

NewSphereの取材に対し、ムアング氏は以下のように返答しています。

「Wafrica プロジェクトは融合ではなく、むしろ美学の結合もしくは並列です。

文化の盗用は、軽蔑や剽窃の感覚があるときに起こることがあります。本物の創作との境界は非常に狭いため、これは文脈的かつ文化的な問題です。

ピカソ、ミロ、クレーの作品の多くがアフリカ美術に大きく『影響を受けた』ことを誰が責めるでしょうか。

キュビズムやその他の芸術形式は、今日世界中で高く評価されています。

これは『文化の盗用』でしょうか。これは人間の創作プロセスの一部だと思います。

ピカソは『私は研究しない、盗むのだ』と言いました。

アーティストは、新しい物語が始まるまで、疲れを知らずに絶えず変身し続けます。

それが私たちの成すべきことです」

最後に、日本に対する思いや日本に住む人々に伝えたいことをムアング氏からコメントしてもらいました。

「これは非常に難しい質問で、私の作品がそれを語ってくれることを願っています。

しかし、私は孤立した文化など存在しないと主張したい。

精神的な観点から見れば、私にとって日本と西アフリカの間に橋が架かりうることは明らかです。

私たちは島民のような考え方をすることができますが、大地が地球上の私たちを結びつけていることを忘れてはいけません。

その大地は何千年もの間動いており、さまざまな方法でつながっています。その意味で、私たちの人類学の起源は深く、曖昧です。これは私たちにとって幸運でしょう!

Wafricaプロジェクトは、これから多くの日本と西アフリカの世代に受け継がれるものです。私はこれを、何百年にもわたる創造、対話、交流の幹だと考えています。

人類を尊重して耳を傾け、観察し、愛し、変革できるかどうかは、私たちの能力次第です。

Wafrica は、私たちがアイデンティティであると信じているものへの見方を改善するために、政治的に取り組んでいます」

異なる文化から共通点を見出し、新しく「第三の美意識」を追求するWafricaの活動は、地球に住む私たちの根源的な繋がりを示唆します。

グローバリゼーションが進み「文化」に対する捉え方が複雑化する中で、その尊重と創出のあり方を見出す先駆けと言えるでしょう。

初の日本開催個展の終了までもう間も無く。丸紅ギャラリーにてその世界を堪能しててはいかがでしょうか。

Text by 楊文果