バイデン弾劾狙う共和党の情報提供者、偽証罪で起訴 ロシアのスパイ疑惑も

裁判所を出るスミルノフ(右から2人目)|Bizuayehu Tesfaye / Las Vegas Review-Journal via AP

◆もう1人はロシア情報局とつながり
 それでも共和党は弾劾調査を諦めず、昨年12月には下院でバイデン大統領の弾劾に向けた調査開始の可否を採決。しかし今年2月に入り、残るもう1人の証言者も逮捕されたことで状況が一変した。

 逮捕されたのは米連邦捜査局(FBI)の情報提供者だった男性で、USAトゥデイによると、この男性はFBIに虚偽の発言をした容疑と、FBIに提供した虚偽と架空の情報の記録を作成した容疑で、14日にラスベガスの空港で拘束された。アレキサンダー・スミルノフというこの男性は、「(ウクライナ企業の)ブリスマがバイデン副大統領(当時)とハンター・バイデン氏に500万ドルずつ賄賂を提供した」などと、前述のコマー下院議員などに証言していたという。

 ところがスミルノフ容疑者はFBIに嘘をついただけではなかった。後日、彼がロシアの情報局とつながりがある人物だと判明したのである。米公共ラジオ(NPR)によると、スミルノフ容疑者は逮捕された際、「バイデン親子とブリスマについての証言提供には、ロシアの情報局が関わっている」と自白したという。つまりバイデン大統領を弾劾で陥れるために、ロシア情報局が虚偽の情報を植えつけ、知ってか知らずか共和党がその証言を利用したのである。

 弾劾調査の証言者が2人とも起訴され、うち1人はロシア情報局とFBIのダブルスパイだった疑いが浮上した今、弾劾調査自体の意味が完全になくなったといえる。そして現在の焦点は、下院監視・改革委員会のコマー委員長や、同じく弾劾調査を強行しようとしていた下院司法委員会のジム・ジョーダン委員長が、証言が虚偽だったことを承知していたか否かである。もしもスミルノフ容疑者がロシア情報局の息がかかった人物であったことや、証言が虚偽だったことを承知して弾劾調査に利用しようとしていた場合、逆に2人を含む共和党関係者が責任を問われる可能性もあるだろう。

Text by 川島 実佳