移民の国オーストラリア、「厳格化」新戦略で狙う優秀な人材

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◆メディアの反応と専門家による分析
 新たな移民戦略に関してのメディア報道においては、移民数の削減も強調するものが少なくない。たとえばBBCの記事は、オーストラリアが移民の受け入れを半数にすること、留学生に求められる英語力の基準を厳しくする点などを報じる。また、ABCニュースの記事では、移民の受け入れ数を削減し、「移民の数をサステナブルなレベルにまで抑える」というアンソニー・アルバニージー首相のコメントを取り上げた。

 一方、学術系ニュースサイトのカンバセーションの記事では移民法などに詳しい専門家の見解を示し、多くの個別の戦略は長年の懸案事項に対する打ち手であると報じる。具体的には、一時的職能移民に対して永住権取得に向けた道筋を示すことや、移民労働者と雇用主との紐付けをなくし、労働者はビザをスポンサーする雇用主を離れ、次のビザのスポンサー先となる雇用主を見つけるまで、180日間の猶予が与えられる(現在は60日)ことになった点などを評価する。

 また、留学生の受け入れ基準の厳格化に関しては、移民の裏道として学生ビザが乱用されていることへの対策とした政府の方針について言及したうえで、昨今主に増えている留学生の内訳は高等教育の領域であり、職業訓練学校などではないと説明する。また、英語力基準の見直しにしても英語検定試験「IELTS」のスコアが5.5から6.0へと引き上げられる予定で、そこまで大げさに言うほどでもないとする。しかしながら、留学生の就労に関する規定の見直しについては煩わしいもので、パンデミックの特例により留学生の就労時間は無制限であったが、今後は2週間あたり48時間までという制限が設けられることになる。また留学ビザの年齢上限も50歳から35歳へと引き下げられるとのことだ。

 昨年6月末時点での統計データによると、オーストラリアの全人口のうち、オーストラリア以外で生まれた人が占める割合は29.5%。移民の国として知られているアメリカでも移民が占める割合は13.6%(2021時点)で、その2倍以上のオーストラリアは移民の割合の世界ランキングでもトップ10に入る。移民はすでにオーストラリアにおいて重要な経済・社会のドライバーであり、引き続き優秀な移民を受け入れることは同国の成長戦略において不可欠だ。今回示された戦略が今後どのように政策に反映されるのか、引き続き注目したい。

Text by MAKI NAKATA