「全米で中絶禁止」法案、なぜ総スカン? 共和党議員が提出

記者会見する共和党のグラム上院議員(9月13日)|Mariam Zuhaib / AP Photo

 11月のアメリカ中間選挙まで2ヶ月を切った。中間選挙では例年、大統領の政党が議席を減らす傾向があり、今回もロシアのウクライナ侵略によるガソリン高騰や、パンデミック後のインフレなどでバイデン大統領の支持率が一時40%以下まで落ちたことから、共和党が上下両院で過半数を得るものと思われていた。

 しかしその後ガソリン価格が下落してインフレも落ち着き、バイデン大統領の支持率も少しずつ回復している。そこで今年最大の論争点であり、中間選挙結果を左右する最大の要因の一つは、米最高裁がロー対ウェイドを覆したことによる「妊娠中絶の権利はく奪」である。共和党議員の多くは中絶禁止を支持しているものの、アメリカ人の大多数は中絶の権利、つまり「選択の権利」と「プライバシーの権利」を支持しており、そこに軋轢が生じている。そのようななかトランプ支持者のリンゼー・グラム上院議員が13日、妊娠15週での全国的中絶禁止法案を提出して注目された。

◆中絶の権利擁護派は85%
 NBCニュースによると、民主党は言うまでもなく、グラム議員の法案は共和党にも不人気だという。共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は「私のカンファレンスのメンバーの大多数は、これに州レベルで対応することを好んでいる」と発言してグラム氏をけん制した。ほかにも共和党ストラテジストに「悪いアイデアだ」「(中絶禁止)問題をさらに全国化して、一般的に共和党には不利になる」と批判されるなど、総スカンを食らっている。
 
 米最高裁は6月、1973年の判決で50年近く続いていた妊娠中絶の権利が「米国憲法に含まれておらず、州ごとに判断すべき」という判断を下した。判決を受けて、中絶反対論者の共和党議員や支持者は喜んだが、それはごく一部の人々であり、アメリカ人の大多数は中絶の権利はく奪を快く思っていないことがわかっている。

Text by 川島 実佳