米中間選挙、民主党に追い風 物価安定、中絶権はく奪で

「インフレ抑制法」に署名するバイデン米大統領(8月16日)|Susan Walsh / AP Photo

◆上院選挙では民主党候補者がリード
 そうするうちに、中間選挙の世論調査でも民主党候補者がリードしているのが目立つようになってきた。上院では現在50対50で民主党と共和党が同数で、票が同数の場合はカマラ・ハリス副大統領がタイブレーカーの役割を果たしているが、共和党員の欠員が出るペンシルバニア州では民主党候補のジョン・フェッターマン氏(同州副知事)がリードしており、ウィスコンシン州でも民主党候補のマンデラ・バーンズ氏(同州副知事)がトランプ派で現職のロン・ジョンソン上院議員をリードしている。またフロリダ州でも、8月になり現職で共和党員のマルコ・ルビオ上院議員が、民主党候補の現職下院議員で元警察署長のバル・デミングス下院議員にリードを奪われた。もし世論調査が正しければ、これだけで民主党が3人加算となり、上院の過半数を超えることになる。

 またNBCニュースによると、8月23日の中間選挙予備選とともに行われたニューヨーク州19地区の下院欠員特別選挙では、民主党のパット・ライアン氏が僅差で勝利。ここは同州のなかでも共和党と民主党のどちらにも票が流れる「スイング・ディストリクト」と呼ばれる地区で、その結果に注目が集まっていたが、同氏の勝利も民主党の勢いを表すシンボルとなった。

 翌日24日には、その勢いに乗るようにバイデン大統領が学生ローンを減免する救済措置を公表。一定の収入以下の場合は1人あたり1万ドル、米教育省による補助金、ペルグラント受給者には2万ドルの減免を行うと述べた。これは同大統領が選挙運動中に行った公約であり、それを守った形だ。額的には少ないという声もあるが、この程度なら自分自身で返済した人も納得する額ということも考慮したのだろう。

 共和党のトップであるトランプ氏は現在複数の捜査を受けており、2024年の出馬も微妙になってきた。また1月6日の議会襲撃事件で捜査を受けている共和党議員も多数おり、今後司法省による捜査が進んだ場合は、さらに共和党支持基盤が傾く可能性もある。アメリカ経済がこのままの状態を保ち何も波乱がなければ、民主党が上下両院とも過半数を得ることも十分あり得る状況になってきた。

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Text by 川島 実佳