公文書持ち出し疑惑か FBIがトランプ邸宅捜索 在任中からずさんな文書管理

トランプ氏の邸宅マーアーラゴ(8月9日)|Lynne Sladky / AP Photo

 ドナルド・トランプ氏が現在居住するフロリダ州の邸宅マーアーラゴが8月8日、連邦捜査局(FBI)により事前通告なしの家宅捜索を受けた。本人への事前通告なしとはいえ、報道によると、同邸宅内を警護するシークレットサービスには家宅捜索を実施する旨が伝えられていたという。

 トランプ氏は現在、1月6日議会襲撃事件や選挙法違反、脱税、婦女暴行などを含む複数の件で訴追または捜査対象となっているが、今回の家宅捜索は同氏が2021年に大統領退任後、多数の極秘文書をホワイトハウスから持ち去っていたことが原因と見られている。
 
◆トランプvs国立公文書管理局の確執
 NBCニュースによると、今回の家宅捜索は1日の大半行われ、トランプ氏によると「金庫まで捜索された」という大規模なものだったが、その理由は国立公文書記録管理局とのトラブルであるという。

 NBCニュースによると、トランプ氏は昨年1月の退任後にホワイトハウスから大量の文書を違法に持ち出し、国立公文書記録管理局との交渉の結果、今年2月に15箱分がマーアーラゴから押収されたという経緯がある。その中には北朝鮮の金正恩氏や、バラク・オバマ元大統領からの手紙も含まれていたという。記事によると、同局はトランプ側と交渉して15箱を返還させたものの、同氏がそれ以上の文書をまだ保持しているとみていた。今回の捜索はトランプ氏が返却しなかった公文書を捜索するためであった可能性もある。元大統領宅が家宅捜索されるというのは前代未聞だが、これまでトランプ氏のように公文書を持ち出して私物化しようとした元大統領の存在もまた前代未聞だろう。

 今年2月のハフポストの報道によると、同局はこの状況を踏まえて、司法省に対しトランプ氏の公文書取り扱いについて捜査を行う要請をしていたという。今回の家宅捜索はもちろん正当な手順を踏んで連邦判事から許可を受けており、FBIが突然執り行ったものではない。

Text by 川島 実佳