「アメリカは日本の軍隊合憲化を支援すべき」米紙が報じる

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◆中国の脅威を各紙が問題視
 ワシントン・ポスト紙が日本の軍隊保持の合憲化に賛成の立場を示す理由として、同紙は安倍元首相が推進した「自由で開かれたインド太平洋戦略」を継続すべきだと考えているようだ。「インド太平洋」のビジョンを通じ、日本の軍事的近代化が必須となることを見抜いていたと同紙は指摘する。具体的な脅威としては、中国の台頭、台湾侵攻のリスク、そして北朝鮮による核使用の危険性があるとしている。一方のアメリカは環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱など国際的な枠組みから距離を置く動きをみせてきたと同紙は振り返りつつ、「アメリカおよびその他民主主義国家は、民主主義国家である日本の戦力の合憲化を支援すべきだ」と唱えている。

 中国の脅威にはヒル紙も注目している。中国が存在感を増す一方、アメリカはアジア太平洋地域の防衛力を縮小する姿勢をみせている。同誌は、結果として「日本はその穴埋めを急ぐことになるだろう」と論じている。

◆現状の憲法の矛盾
 ワシントン・ポスト紙は、現状の日本の憲法が「時代遅れの法的なあいまいさ」をはらんでいるとも指摘している。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と謳う憲法だが、同紙は「しかし日本は、毎年およそ500億ドルを、25万の要員から成る『自衛隊』に費やしている」と指摘している。日本の軍隊が合憲化されたところで、「日本が陸海空軍を保持するという、すでに現実となっていることを合憲化するに過ぎない」との立場だ。

 米紙が改憲に容認姿勢を示すのと対照的に、中国は警戒感を示している。中国共産党が発行するグローバル・タイムズ紙(環球時報)は6月21日、「改憲の動きが高まり、日本は危険な道へ踏み出した」と報じた。「度重なる無謀な国内政策と外交政策」により、日本が「アジア太平洋地域と世界の安定を深刻に脅かしている」と同紙は述べている。

 一方で欧州に関しては、岸田首相は先月末、スペインで開かれた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議にオブザーバーとして初めて出席。中国やロシアをにらみ、米欧の軍事同盟との関係を強化しようとしている。日本の兵力合憲化に関しては、アメリカ、欧州、歴史認識の異なるアジアで、それぞれ賛否がありそうだ。

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Text by 青葉やまと