対日関係改善も 韓国新大統領が直面する課題とは 問われる手腕

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◆日韓関係は改善に意欲
 注目の日韓関係については、新政権のもとで改善がみえるかもしれない。米シンクタンク外交問題評議会(CFR)のスコット・スナイダー氏(5月9日)は、尹政権は日韓関係を「1990年後半に金大中(キム・デジュン)韓国大統領と小渕恵三首相のもとで達成されたような、過去数十年で最高の水準」にまで再び高める意思を公にしていると述べている。ただし慰安婦問題と強制労働問題をめぐり、双方の国内から反発がある。尹氏の課題として、韓国裁判所の判例の妥当性を認めながらも、日韓問題への対応に関しては国民の支持を取りつけなくてはならないと述べ、繊細な舵取りが要求されるとの認識を示している。

 一方でヒル紙は前述の北朝鮮問題を交え、日本との建設的な関係を構築できるかもしれないとの見方だ。韓国国内での反中感情の高まりを受け、対北での現実的な選択肢として日本との連携が視野に入ってきた。同紙は二国間の防衛面での条約締結は期待できないとしながらも、「とくに北朝鮮のミサイルに対し、防衛面で日本と効果的な協力ができる」と述べている。「防衛費を巨額の国内総生産の1%に抑えている日本だが、眠れる巨人であり、その潜在的な軍事能力はこと北朝鮮と中国には無視されるべきでない」と記事は論じる。

◆韓国国内の課題も
 外交問題に加え、尹政権は韓国国内の問題に直面するだろう。足元の支持率は、政権交代直後の「ハネムーン期間」にもかかわらず60%を切っている。就任直前に80〜90%以上の支持を得ていた歴代大統領との差が顕著だ。10日の演説を通じ尹氏は、雇用需要の低下と貧富の拡大を課題として挙げ、韓国で経済問題が深刻化しているとの認識を示した。経済成長への取り組みを優先事項に挙げており、成果が注視される。

 また、外交問題評議会は、外交問題での失敗につけ込もうとする国内野党への対応も迫られると指摘する。国際社会での存在感を示し、国民の支持を高められるかが問われている。

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Text by 青葉やまと