1991年ソ連崩壊の衝撃、中国共産党がそこから学んだもの

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◆ソ連の二の舞を回避 次の3つの決断とは
 中国がソ連の二の舞にならないために選んだのが3つの決断だと豪ABCは述べる。1つ目は資本主義の受け入れだ。ソ連の計画経済は中央集権的で、非効率、無駄、物資の不足に悩まされた。ソ連の失敗を意識し、中国は社会主義的な計画経済を否定し、「中国の特色ある資本主義」を採用した。外資に門を開き、工業を発展させたことで貧困率は低下。2001年には世界貿易機関(WTO)に加盟し、「世界の工場」となった。経済発展で生活水準を上げることで、国民の支持を強固にしたと言える。

 第2の決断はメッセージの管理だ。ゴルバチョフ氏は長年の検閲と秘密主義を改め、政府の透明性と表現の自由を高めるためグラスノスチ(情報公開)を打ち出した。しかしこれにより市民は表現の自由を手に入れ、権威への批判の波がわき起こる結果となった。中国はこれを教訓に、国内の情報の流れに気を配り、法律とテクノロジーを使って国民が触れる情報をコントロールしている。

 3つ目は周辺を監視することだ。多民族、多言語、多文化だったソ連では、1980年代に入ってその衛星国が軌道から外れ始めた。崩壊後はソ連の4分の3の領土に半分の人口が住む、かなり小さくなったロシアだけが残った。中国はソ連の轍を踏まないため、台湾、香港、新疆、チベットなどをより厳しい管理下に置こうとしている。

 ダーンズ氏は、ゴルバチョフ氏のペレストロイカ(改革)の失敗は、悪化した経済を政治改革で救おうとしたことだと指摘。中国が生き残ったのは、経済は改革しても政治を変えなかったことで、今後もその方針は変わらないだろうとしている。(ワシントン・エグザミナー)

◆鉄拳支配に弱点も 中国の行方は?
 中国政府系機関紙、環球時報の元編集長、胡錫進氏は、ソ連崩壊は30年間効果を発揮した中国社会へのワクチンに等しいと述べる(グローバル・タイムズ)。ソ連と現代中国の差は明らかだが、共産党支配の限界を指摘する声もある。

 マルケス氏は、市民を極端に支配し、フィードバックや批判がなく、外部との接触が少なくなりつつある中国のシステムでは、欠陥や限界が見えなくなることが深刻な問題だとする。アメリカン・エンターブライズ研究所のアジア研究ディレクター、ダン・ブルメンタール氏は、我々が知っている中国はピークを迎えたとし、今後は労働力不足、高齢化、非効率な国有企業といった内部問題と、党内腐敗が中国の悪夢につながるのではないかとしている(ABC)。

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Text by 山川 真智子