社会運動に対する規制か? ナイジェリアの「ツイッター禁止」の実態、その影響
◆ツイッター禁止の影響
人口2億人のナイジェリアにおけるツイッターのユーザー数は、約4000万人と推計されている。ツイッターは、とくに若者の間での政治社会運動、プロテストのプラットフォームとして活用されてきた。2014年にナイジェリアの女子生徒276名が、ナイジェリアのテロ組織ボコ・ハラムに誘拐された事件を受けて、解放を要求するムーブメントが#BringBackOurGirlsのハッシュタグとともに広く拡散された。また、2020年には、ナイジェリア警察の部隊SARS(対強盗特殊部隊、Special Anti-Robbery Squad)の不当な暴力に対する抗議の表明として、#ENDSARSのハッシュタグが広まった。ラゴス在住のBBC記者は、ナイジェリア政府は2015年ごろからSNSに対する規制を検討していたと分析する。
政府の発表後、現地の主要なモバイル回線を通じたツイッター接続が遮断された。いくつかのWi-Fiネットワークなどでは接続できるケースもあるようだが、ナイジェリア人にとって携帯通信は主要なネットアクセス方法だ。ただし、VPN接続は可能。ツイッター遮断の発表を受けて、「VPN」の検索が急増した。アフリカニュースの週間デジタルマガジンThe Continentによると、ツイッター禁止後のVPNの利用は1409%増加した。VPN接続による不正なアクセスを政府がどこまで追跡・起訴できるかどうかは不明だが、ナイジェリア国内のユーザーにとっては無視できないリスクだ。さらに、ナイジェリアは国内のインターネット・アクセスの管理強化のために、中国サイバースペース管理局(Cyberspace Administration of China)に助言を仰いでいるとのこと。もし今後、中国の「グレート・ファイアーウォール」のような情報のブロッキング・システムが構築された場合、ナイジェリア国内の人々のインターネット・アクセスはさらに管理・規制される可能性がある。一方、ツイッター遮断が今後継続された場合、人々はWhatsAppやKooをいった代替プラットフォームへ移行するといった行動で、レジリエンスをみせる可能性も高い。
ツイッターの遮断は経済コストも伴う。ネットブロックは、ツイッター遮断のコストは1日あたり600万ドルだと試算する。影響はシャットダウンによる経済活動の鈍化といった直接的なものだけではない。デジタル・メディアを禁止するといった強行措置は、ナイジェリアが外国資本の流入を促すうえでの足かせともなる。規制が増えることで、投資家が退く可能性も高い。ツイッター社は4月中旬に自社のアフリカ拠点をガーナにかまえることを発表した。ナイジェリアは、アフリカ最大の経済であり、ガーナと比較してより大きな人口を抱えている。実際、ナイジェリアのツイッター・ユーザーだけで、ガーナの全人口を上回る。しかし、ツイッター社は、政府の規制が少なく、より優れた投資環境であると判断したガーナに拠点を設けることを決定した。
ナイジェリアのツイッター遮断については、ナイジェリアの政府関係者内でも意見が分かれているようだ。テック・ハブとして起業やイノベーションを推進したいラゴス州知事にとっては、遮断は必ずしも歓迎できる施策ではない。今後、政府によるさらなるSNS規制が進むか、それとも市民の発言の自由を守り、創造的なイノベーションが促進されるような状況となるか。ナイジェリア政府の今後の判断に注目したい。
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