お金にまみれた大統領選と、広がる貧困 ナイジェリア

AP Photo / Ben Curtis

 ナイジェリアの首都の外れで、何千人もが防水シートと木の枝で作った簡素な建物に暮らす貧しい地域に、選挙ポスターはほとんど見当たらない。

 65歳のジャファー・アリ氏は、小さな食料雑貨店を営みながら、大統領候補がいつかルガの町を訪れる時を待ち望みながらも、期待を寄せてはいない。

「これまで使われた資金のうち、私のところに回ってきた分は1ナイラもありません」とアリ氏は言う。同氏の言うナイジェリアの通貨は、1ナイラ=4分の1セント程度に相当する。

                                                                                                                 

 アリ氏はまた、有力候補らが集会の参加者を増やそうと現金を配ったり、投票を前に政府が無利息融資を行ったりしていることについて、「多額の資金がばらまかれていると聞いています」と言う。

「私たちが神に願うことはただ一つ、いつの日か私たちのことを思い出し、ここを訪れてくれる指導者が現れることです」。

 23日に延期されたナイジェリア大統領選を控え、貧困の拡大に多くの国民が苦しんでいる状況とは相反し、莫大な資金をかけた選挙キャンペーンが繰り広げられている。困窮した地域では選挙活動が行われていないのに対し、中心地のアブジャは、選挙期間中に大きなにぎわいを見せている。首都・アブジャの並木通りには、大統領候補のカラフルなポスターが貼られ、支持者らがバスに乗ってイベントに駆け付ける。

 現職のムハンマド・ブハリ大統領が、ライバル候補の大富豪、アチク・アブバカル氏の猛追をかわそうとするなか、今回の選挙キャンペーンにはナイジェリア史上最大規模とも言われる資金が投入されており、同国の貧困層が抱く不満を浮き彫りにすることともなった。

 大統領候補が使用できる金額は、10億ナイラ(約2億9,887万円)までと法律で定められているにもかかわらず、ブハリ大統領とアブバカル候補の選挙キャンペーンには、それをはるかに上回る資金が投入されており、後援団体からの寄付金、寄贈品の量も相当なものだと言われる。

 わかりやすい例を挙げれば、政治腐敗の撲滅を目指す活動家として尊敬を集めた後、一転して与党支持を表明したヌフ・リバデュ氏を支持するアダマワ州北東部のある団体は、先月、ブハリ大統領の再選に向けた選挙キャンペーンに車両40台を寄付した。その額は寄付の限度額として定められている100万ナイラを大きく上回り、驚きを呼んだ。

 ブハリ大統領は、1980年代に軍事政権を確立したが、短命に終わった。しかし2015年に腐敗の撲滅、経済の促進、イスラム過激派グループ、ボコ・ハラムによる激しい反政府活動の一掃を誓約し、政権に復帰した。

 ブハリ氏の汚職対策が、実際は反対勢力を抑え込むための対策であり効果を発揮しなかったことや、北部の情勢が引き続き不安定であること、経済の停滞により海外からの投資を受けられずにいることなどから、ブハリ氏の誓約はいずれも果たされなかったというのが、ナイジェリア国民大半の見方だ。

 大統領としての手腕が疑問視されていることに加え、76歳となったブハリ氏はまた、病名は公表していないが治療のため、数ヶ月間を国外で過ごしていた。

 1億9,000万人というアフリカ最多の人口を抱えるナイジェリアの失業率は、ブバリ氏が大統領に就任した当時は8.2パーセントだったが、2018年第3四半期には23パーセントを超えるまで悪化したと公式に発表されている。

 国際通貨基金によると、2016年に原油価格が1バレル=30ドル未満に急落したことを受け、ナイジェリアは2017年初頭まで5ヶ月間に及ぶ不況に陥った。

 ナイジェリアは現在もアフリカ最大の石油生産国だが、ブルッキングス研究所によると、国の総収入の半分超が公債の返済に充てられている。同研究所は昨年、極度の貧困人口について、ナイジェリアがインドを抜き、世界最多となったと報告している。

 23日の選挙でどちらの候補者が大統領になったとしても、経済面で極めて困難な課題に直面することとなるだろう。同国の経済状況により国民は政府に失望し、多くは怒りも抱いている。

 石油に恵まれていながら、世界銀行によると、2017年のナイジェリア国民一人当たりの所得は1,968ドル(約21万8,000円)となっている。最低賃金をめぐる労働紛争は未解決のままで、現在の最低月収は1万8,000ナイラ(約5,500円)だ。

 実業家として成功を収めたアブバカル元副大統領は、4回目の大統領選に挑み、「ナイジェリアを復活させる」という誓約を掲げ、国民の不満に対処しようとしている。

 自分の国が脆弱で先の見えない国と捉えられていることに、いらだちを示す国民もいる。

 大学を卒業してから職に就けていないという29歳のエマニュエル・チメジー氏は、「私たち民衆は、この国で苦しい生活を送っています。私たちが目にしているものは、ネガティブな変化です」と言う。

「ナイジェリアは数多くの可能性を持っていますが、それらをどう生かすかが大きな課題です。ただ石油ばかりに依存するのではなく、経済を多角化できるような、優れた指導者が必要です」

 チメジー氏はまた、米など主食の価格高騰に繋がるインフレ率を考慮すれば、政府は農業への大規模投資に乗り出すべきだと言う。

 アブジャで社会正義センターを運営するエゼ・オニェクペレ氏は、「ブバリ氏は退任すべきです。ブバリ氏を退任に追い込まないのであれば、民衆はこれ以上不満を言ってはいけません」と言う。

 同氏はまた、選挙活動の一環として行われている集会について、「見境のない乱用の場」となっており、庶民の生活に関する問題には目を向けておらず、それが候補者らの政権運営への姿勢だと指摘する。

 評論家らは、選挙キャンペーンに多額の費用が投入されていることについて、役人が当選・就任後にその費用を回収しようと動くため、政治腐敗が進むことになるだろうとしている。

 アブジャに拠点を置く市民団体、民主・開発センターのイダヤト・ハサン所長は、「候補者のマニフェストはいずれも国民のニーズに直接訴えかけるものではありません。政治活動は、国民のために尽力する活動とはなっていません。国民に奉仕しようと思っていれば、そんなにも多額な投資をすることはなかったでしょう。命がけで取り組んでいるようには見えません」と言う。

 イギリスのシンクタンク、王立国際問題研究所の報告書にも同様の懸念が見られる。同報告書は、ナイジェリアの2大政党には大した違いがなく、どちらの政党も「後援者の力で成り立っている厄介なエリート集団の連立政権のようなものであり」、その目指すところは権力と、それに付随する財力を手にすることだとしている。

 地域住民からも同意の声があがっている。

 商業の中心地、ラゴス在住で、大学を卒業したものの無職のウォーレ・アデオエ氏は、「ナイジェリアの政治は、投資活動になっています。敗者は全財産を失う一方、勝者は一夜で富豪となるのです」と言う。

By RODNEY MUHUMUZA, Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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