ベラルーシの「国を挙げてのテロ行為」はなぜ起きたのか 反体制派の記者逮捕の背景
◆ジャーナリストにとって危険な国
ジャーナリストへの弾圧も激しさを増している。許可を剥奪されたり、デモや裁判の取材中に逮捕され、反政府活動家と同じ刑期が科せられるようになったのだ。「反政府派や元政治犯へのインタビューさえ、(中略)逮捕の理由となる」状態で、国内の動きについての報道がほぼ不可能となった。(ル・タン紙、5/23)
先週頭には、ベラルーシ国民の3分の2が閲覧していた巨大サイト『tut.by』が潰された。これまでも定期的にブロックされながらも活動を続けてきたが、今回は、ゾロトヴァ編集長をはじめ複数のジャーナリストが逮捕され、家宅捜査を受けた。容疑は「公的資金の横領と脱税」だ。これに先立ち、2020年12月にはプレス・クラブ・ベラルーシが同様の処分を受けており、そのとき逮捕された5人のジャーナリストは、いまも牢につながれたままである。(同上)
これらの「魔女狩り」状態を背景に、国境なき記者団は、現在ベラルーシはジャーナリストにとって、ヨーロッパでもっとも危険な国だと報告している(同上)。
◆ロマン・プロタセビッチ氏とは?
今回ベラルーシ当局に拘束されたプロタセビッチ氏は、2020年の不正選挙への抗議運動に大きな役割を果たしたメディア「Nexta」の元編集長だ。Nextaは、暗号化メッセージアプリ「テレグラム」で視聴可能なメディアだ。市民デモに対する警察の暴力などを流し、人口950万人の同国で、多いときには一日200万のアクセスを記録した。(ル・モンド紙、5/24)
プロタセビッチ氏は、すでに2019年からベラルーシを離れていたが、ベラルーシ当局は11月末、同氏を「テロリズム活動に関わる個人リスト」に付け加えている(フランス・アンフォ、5/24)。
すでにルカシェンコ氏が大統領の座についている1995年にベラルーシで生まれたプロタセビッチ氏は、未成年のころから反政権運動に参加していた。17歳のときには、警察に拘束され、暴行を受けている。「警官らは、僕の腎臓と肝臓のあたりをひどく打ち、そのあと3日間血尿が出た。未解決の殺人事件の犯人に仕立て上げてやると脅迫された」と同氏はのちに語っている。このときはまだ未成年であったため、拘留されることなく釈放された。(同上)