トランプ大統領最後のサプライズ? 「駆け込み恩赦」と退任日のイベント

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◆自分と家族も恩赦対象に? 
 一方、2024年大統領選の再出馬とともにトランプ氏の頭を占めていると思われるのが「恩赦」だ。トランプ氏にはこれまで、資金洗浄や選挙活動資金の不正利用、詐欺、性的暴行、司法妨害、税金の不正申告など、さまざまな嫌疑がかけられてきた。大統領であるがゆえに注目を集め、一般市民だった頃には知られていなかった疑いが明るみに出てしまったとも言える。過去4年間は大統領として不訴追特権に守られてきたが、来年1月20日の任期満了後にはこの特権を失ってしまう。

 NBCニュースによると、そこでトランプ氏は訴追される前に、自分自身と家族、側近などを対象とした「予防的な恩赦」を与えることを検討しているという。同記事によると、米最高裁は1866年、大統領の恩赦が可能な範囲について「法の下におけるあらゆる犯罪で、(犯罪を)実行した後なら、訴追を受ける前、裁判の途中、あるいは有罪判決を受けた後のいつでも」与えることができると判断した経緯がある。つまりこの判断によると、大統領自身はともかくとして、家族や側近が訴追される前に、大統領が恩赦を与えることは可能だ。しかし恩赦できるのは過去におかした犯罪に限定される。

 恩赦を与えるためには、そこに「犯罪」がなければならない。つまり、恩赦を受けることが必要な人は何らかの罪をおかしたことが前提となるため、恩赦を受けること自体が犯罪を認めることになる。また大統領恩赦は連邦犯罪のみに適用され、各州政府が捜査を行う犯罪については適用されない。

 トランプ氏が自分自身に恩赦を与えられるか否かについては、アメリカ史上前例がないことから疑問視されている。CNN(電子版)によると、1974年のニクソン元大統領辞任前、司法省によって書かれたメモには、「大統領は自分自身に恩赦を与えられない」と記載されているという。そのメモが記した理由とは、「自分(の罪)を自分で裁判することはできない」からだ。しかし、もちろん家族がこの限りではない。実際、トランプ政権が終わりに近づくにつれて、トランプ一家が関わる裁判に注目が集まってきている。

 CNN(電子版)によると、2017年1月20日にワシントンD.C.のトランプ・ホテルで行われたトランプ大統領就任パーティーで、会場の費用が不正に吊り上げられ請求された疑いがあるとして、大統領の娘であるイバンカ・トランプ氏が今月1日、同区司法当局に聴取を受けた。この場合はワシントンD.C.地方当局(コロンビア特別区)が訴えた件であるため、イバンカ氏が有罪になった場合でもトランプ大統領は同氏を恩赦することができない。

 一方、イバンカ氏の夫であるジャレッド・クシュナー氏の周りでも、同氏の弁護士が大統領恩赦に関する賄賂疑惑で名前が挙がるなど、不穏な動きが出始めている。しかしCNN(電子版)によると、これは最近の話ではなく、2017年にトランプ大統領が就任した後の件であるという。この場合、捜査を行っているのは米司法省であるため、もしクシュナー氏がこの件に関連していた場合でも、トランプ大統領が予防的恩赦を与えることが可能ということになる。

 任期終了まであと1ヶ月半弱に迫ったトランプ氏だが、新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、国民やビジネスの危機を救うための努力をする気配もなく、自分自身の去就と金策、そして政治家としての将来について頭がいっぱいのようだ。今後、バイデン新大統領が就任宣誓を行う1月20日までは、波乱に満ちたドラマが続きそうである。

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Text by 川島 実佳