「最悪の時」に新型肺炎、安倍政権最大の危機

Sasa Dzambic Photography / Shutterstock.com

 日本国内の新型コロナウイルスの感染は、感染経路のわからない市中感染の段階に入ってきた。対応に出遅れ、迷走を続けた政府に批判が集まっており、景気の悪化も相まって、安倍政権最大の危機となっている。

◆コロナで窮地に 政権の危機を認識
 新型コロナへの政府の対応に関して、ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した上智大学の中野晃一教授は、驚くほど無能と手厳しく批判。最初の感染が1月28日に確認され、WHOも数日後に「世界的に懸念される公衆衛生上の危機」と警告を鳴らしていた。しかし感染対応のための「基本方針」が出たのは2月25日で、その間に感染が広がってしまったと指摘している。医療従事者のためのマスク、消毒薬、検査キットの不足、検査対象の制限、ダイヤモンド・プリンセス号での感染拡大などを問題視し、日本の官僚制度の「事なかれ主義」、安倍首相の無関心、世襲議員とその取り巻きで構成される日本政府が今回の危機を招いた一因だと見ている。

 ブルームバーグは、これまでに数々の政治的危機を乗り越えて歴代最長政権となった安倍政権だが、新型コロナは最も厳しい試練になりそうだと述べる。安倍首相はこれまでの比較的穏やかなアプローチから、突如全国の学校への休校要請という措置に出て、社会を混乱させた。政府の危機感の表れでもあるが対応を誤れば政権の危機につながることを安倍首相が認識した結果でもあると、Teneo Intelligenceのアナリスト、トバイアス・ハリス氏は指摘する。政府は緊急事態宣言の実施を可能にする法整備に入ったが、すでに国内の感染者は293人、死者は6名に達している。

Text by 山川 真智子