マドゥロ大統領狙った暗殺未遂事件 反対派との対立激化 ベネズエラ

Miraflores Presidential Palace via AP

 ベネズエラ政府は5日、爆発物を搭載したドローンによるマドゥロ大統領の暗殺未遂容疑で6人の容疑者を拘束した。目撃者の1人は、アパートが揺れるほど恐ろしい爆発だったと話している。

 政府は今回の事件について、マイアミやボゴタを拠点とする活動家と野党が共謀したと主張したが、具体的な証拠は何も示していない。野党指導者によると、マドゥロ大統領は政敵を広くあぶり出し、批判勢力をさらに封じ込めるために今回の事件を悪用する可能性があると警告した(編注:ベネズエラ最高裁は8日、国家反逆や殺人未遂などの容疑で野党有力指導者のボルヘス前国会議長への拘束命令を出した)。

 今回の暗殺未遂事件は、ベネズエラが経済問題および人権問題の深刻化に喘ぎ、マドゥロ大統領が孤立を深めているなかで起きた。アメリカを始めとする他国はベネズエラの高官に経済制裁を行うほか、マドゥロ体制を独裁政権と呼ぶなど公然と非難していた。

                                                                                                                 

 ネストル・レベロル内相によると、マドゥロ氏が4日夕刻に開かれていた国家警備隊の第81回記念式典で演説中、重さ1kgのC4プラスチック爆弾を搭載したドローン2機が、大統領とその妻、高官たちをめがけて飛行していたという。うち1機は大統領の頭上で、もう1機は目の前で爆発させる予定だったとみられる。

 しかし1機については軍がドローンの進路を電子的に操作して変更したほか、もう1機は、マドゥロ氏が数百人の兵士を前に演説していた場所から2区画ほど離れたアパートに墜落したという。

 6人の容疑者のうち2人は以前に政権と諍いがあったと内相はコメントしたが、容疑者名と具体的な犯罪は明言しなかった。うち1人は、ベネズエラを経済危機に陥れるなど国を揺るがした2014年の抗議活動に参加した。今の経済状況は大恐慌時よりも悪化している。もう1人は、軍の兵舎襲撃に参加したことで逮捕歴がある。

 ウラジミール・パドリノ・ロペス防衛相は5日の国営テレビ番組に出演し、今回の事件はマドゥロ大統領をはじめベネズエラの政権執行部の排除を目的としたものだったと語った。

 現場近くでドローンが爆発し黒ずんだアパートの捜索が続いているほか、「映像証拠」を見つけたという自動車や2ヵ所以上のホテルの押収、捜索も行われている。

 アパート近くに住む2人の住民によると、4日夕刻、住宅地通りの上空を1機のドローンが飛行していたのを目撃したが、やがて爆発音がしたという。

 うち1人はAP通信社に、ドローンがアパートに墜落する模様を収めたスマホ動画を見せてくれた。ドローンは地上に落下した後に爆発し、アパートが被災したという。

 もう1人の目撃者であるマイラム・ゴンザレス氏が5階のバルコニーに駆け込んだところ2回目の爆発音があり、煙が立ち込めた。

「とても強い衝撃で、アパートが揺れました。恐ろしかったです」

 4日夕刻に演説をしていたマドゥロ大統領は動揺を隠せない様子で、爆発した「飛行物体」を目にした当時を思い返した。最初は、打ち上げ花火の演出と思ったらしい。

 まもなく一瞬の爆発音を聞くと、現場は大混乱に陥ったという。警備員が大統領に黒色のマントをかけて会場から立ち去るよう誘導したが、テレビの映像では、制服を着た兵士たちが隊列を乱して逃げる模様が写し出されていた。

「私を殺そうとする試みだ」と大統領は言った。

 マドゥロ大統領は今回の事件の首謀者について、コロンビアのサントス大統領を含めボゴタやマイアミにいる同士と共謀した「極右集団」によるものと述べた。サントス大統領とドローン攻撃には何ら関わりがないと、コロンビア政府は猛烈に否定している。

 アメリカがベネズエラ野党を支援しているとも発言しているマドゥロ大統領は、トランプ米大統領に対し「テロリスト集団」に責任を課すべきだと要求した。

 トランプ政権のジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官は「FOXサンデーニュース」で、「アメリカの犯罪法に違反した可能性があることを示すはっきりとした情報をベネズエラ政府が持っているなら、真剣に調査することにしたい」と述べた。

 ベネズエラの反体制グループ連合であるBroad Frontは、証拠もなく事件への関与を主張する政府を非難した。

 同グループは声明の中で、「政府は今回の事件で何が起きたかを明確にしようとせず、この状況を利用して『反対勢力』を無責任な方法で一掃しようとしているのは明らか」と述べた。

 自称Soldiers in T-shirts(Tシャツを着た兵士の国民運動)という無名集団が犯行声明を出している。大統領めがけて爆発物を搭載したドローン2機を飛ばす計画だったが、兵士が撃ち落としたという。このメッセージの信憑性については独立的な検証が行われておらず、AP通信社からの問い合わせに対し、この集団はコメントしていない。

「今日は不首尾に終わったが、成功するのは時間の問題だ」と同集団名はツイッター上でこう述べた。

 現政権は常時、大統領を攻撃し体制転覆を企てているとして反対勢力を非難している。国際通貨基金(IMF)が今年の物価上昇率を100万%と予測するほど進行したハイパーインフレを政府が封じ込めようとしているなか、元バス運転手のマドゥロ氏は、着実に権力を掌握した。

 この先導的指導者の使命は、故ウゴ・チャベス氏の唱えた社会主義革命を実行することだ。最近、各方面から非難された選挙戦を制して、大統領は再選を果たした。野党で最も人気のあった候補者は、大統領選への出馬が認められなかった。

 マドゥロ大統領によると、今回の事件により軍の支援があること、チャベスの革命遂行に支障のないことを確信したという。

「ベネズエラは今後も、民主的、独立的、社会主義的な道のりを歩む」と大統領は語っている。

 複数のアナリストは、マドゥロ氏は依然として軍の支援を受けているが、4日に流されたテレビのライブ映像をみると彼が脆弱な立場にありそうなことが明らかになったと述べた。

 ニューヨークを拠点とする投資企業Torino Capitalは「爆発物を前にして、訓練を受けた兵士がパニックになって混乱する姿は、専制主義的な思想やマドゥロ氏が誇りとする治安部隊の忠誠心とは対照的だ」とコメントしている。

 マドゥロ政権が攻撃されたのは、今回が初めてではない。

 昨年には、猛烈な抗議活動が日常となっていた最中、1人の不良警官がヘリコプターを盗んで首都上空を飛行し、官公庁ビルに手投げ弾を投下した。犯人のオスカル・ペレスおよびその同士は、半年にも及んだ銃撃戦で殺害された。

By SCOTT SMITH, Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP

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