「G7マイナス2」 海のプラごみ対策、日米はG7文書に署名せず

出典:首相官邸ホームページ

 日本とアメリカを除くG7首脳は、プラスチックのリサイクルを進め、使い捨てプラスチック製品の削減に取り組むことなどを含んだ、「海洋プラスチック憲章(Ocean Plastics Charter)」に署名した。プラスチックごみによる海洋汚染は深刻な国際問題となっており、G7として対策に乗り出すことで、国際社会のお手本になることが期待されている。

◆海はプラスチックでいっぱい 対策待ったなし
 G7の発表によれば、この憲章は、プラスチックの製造から廃棄までを管理し資源効率を高めることを目指している。具体的には、2030年までにすべてのプラスチックを再利用、リサイクル可能なものにするため産業界と取り組むこと、使い捨てプラスチック製品を削減しリサイクル・プラスチックの使用を促進することなどが含まれている。

 ドイチェ・ヴェレ(DW)は、これまでにいくつかの海洋汚染に関する多国間の合意はあったが、プラスチックごみは依然として海洋に溜まり続けていると述べる。国連環境計画(UNEP)によれば、世界中で年間5兆枚のポリ袋が使用されているという。プラスチックやそれがさらに細かくなったマイクロプラスチックは世界中にばらまかれ、多くの海洋生物の命を奪っている。

 業界誌プラスチック・ニュースによれば、国連のグテレス事務総長は、プラスチック憲章を歓迎し、海洋汚染への警鐘となることを期待している。しかし、環境保護団体グリーンピースなどは、拘束力のない任意の合意で問題解決は難しく、青写真が描かれたことは評価するものの、計画自体は生ぬるいと述べている(DW)。

◆国内への影響を考慮 日本は署名辞退へ
 海外メディアは、日本とアメリカが憲章に署名しなかったことを取り上げている。DWは、「G7マイナス2」と見出しをつけ、日米を除く5ヶ国が署名と報じた。カナダのグローブ・アンド・メール紙は、「他のG7参加国との合意に日米は署名を辞退した」と述べ、パリ協定への参加を拒んだアメリカが署名しなかったことは驚きではないが、日本の理由は明らかではないとしている。

 TBSによると、日本政府関係者は、「国内法が整備されておらず、社会にどの程度影響を与えるか現段階でわからないので署名ができなかった」と理由を述べている。ちなみにプラスチック憲章は、「健全な海洋と回復力ある沿岸コミュニティのためのシャルルボア計画」という声明の付属文書となっており、メインのほうにはG7メンバーすべてが合意している(トランプ大統領は、カナダのトルドー首相との仲たがいから、9日の時点でG7の宣言全体を承認しないとしている)。

◆問題解決には国際協調が必要 日米は協力を
 実際のところ批判を浴びているのはアメリカだ。ワシントン・ポスト紙(WP)は、海にプラスチックごみが大量にあることは目で見て明らかだと述べ、アメリカが海洋汚染の問題でG7と合意できなかったことにがっかりしている。

 同紙によれば、最もプラスチックごみが集まるのはアメリカに近い大西洋と太平洋だ。ただこれらは海流に乗ってたどり着いたもので、世界で最もプラスチックごみを海に出すのは、中国をはじめとする途上国だという。それでも2015年の調査によれば、アメリカは海洋プラスチックごみの出所としては世界20位にランクされており、G7では最悪だ。海岸線が長いこと、一人当たりのプラスチック使用量が多いことも影響していると見られる。結果として、プラスチックの海洋汚染問題は、他のG7諸国よりもむしろアメリカの問題だと同紙は指摘している。

 UNEPによれば、すでに世界60ヶ国以上で使い捨てプラスチック製品の使用禁止や課税が行なわれているというが、ドイツのメルケル首相は、欧州だけや各国レベルでの取り組みでは十分ではないと述べている(DW)。プラスチック・ニュースによれば、今回のプラスチック憲章が、パリ協定スタイルのグローバルな合意へのきっかけになることを期待する声もあるだけに、日米の早期の協調が求められる。

Text by 山川 真智子