米中間選挙を控えたいま、世論調査の結果を改めて考える

Alexandru Nika / Shutterstock.com

著:Stephen Utychボイシ州立大学、Associate Professor of Physics)

 1,300もの新聞社や放送局に情報を配信している非営利ニュース組織のAP通信社スタイルブックを更新し、「選挙結果の予想をしようとする世論調査は、テーマが何であれ、リード記事、トップニュース、単独の主題になってはならない」という姿勢を明らかにした。

 この変化は明らかに、2016年米大統領選を受けてのものだ。当時、選挙前の世論調査による予想では、幾度となくヒラリー・クリントンの勝利が伝えられていた。

                                                                                                                 

「2016年の選挙結果は、世論調査が完璧でないことを改めて思い知らせてくれました」と、AP運営部門編集長代理のデビッド・スコット氏は話している。「世論調査の結果は全体像ではなく、一つの側面にすぎないことは疑いようがありません」

 2016選挙戦の予想が外れたことで、世論調査に対する批判の声が高まった。世論調査は民主主義にとっての悪だと非難する人さえいた。

 APでは、今回のような限定的で、直接的なガイドライン策定にあたり、世論調査で名高い2つの組織(ピューリサーチセンターNORC)に助言を求めた。これらのガイドラインは、ジャーナリストが世論調査のことを伝えたり、有権者が世論調査の結果を気にかけたりすることを止めるものではない。その代わり、記者は世論調査についてもっと情報を拡充して伝えるよう指導している。それにより有権者が受け取る情報の質も向上する。

 しかしながら、シンディー・カム氏とともにまとめた私自身の研究によると、ジャーナリストや有権者は世論調査を完全には無視しない方がよい。これらの調査は有権者にとってメリットがあるからだ。

◆世論調査は有権者を引き込む
 ある選挙が接戦とみられるとき、有権者は選挙にますます関わろうとするほか、候補者をより深く検討する。また、支持率が上昇している候補者についてはもっとよく知ろうという動機が有権者に生まれる。世論調査により選挙が接戦であることが判明した場合、もしくはある候補者が有利であることが判明した場合、有権者の注意を選挙に向けられるだろう。

 世論調査が選挙の全体像を示すことはないというAPの主張は正しいが、世論調査によって選挙に対する有権者の考え方を変えることもできる。私たちの研究では、有権者に対し世論調査に関する情報を1つ提供した。この情報は、有権者が候補者について情報探索する方法に影響した。ある候補者が有利、もしくは選挙が接戦であるとみられるとき、有権者はその候補者が訴える政策に関連する情報を集めるようになった。

 世論調査の情報を活用している有権者は、以下の3つの重要な指針に従うことで、さらに上手に世論調査を活用することができる:

1)世論調査の実施方法について考えてみる
 あらゆる世論調査は、これから結果を予想しようとしている母集団から、サンプルもしくは回答者グループを抽出する。選挙結果を予想する世論調査の場合、この作業はとくに困難である。世論調査会社では、ある母集団(実際の投票者)について予想をしようとする。しかしこの人たちの標本を抽出することはできない。投票する意思について、有名な話だが(投票に行かないのに行くと)偽りの報告をする人がいるからだ。

 この問題を解決しようと、多くの世論調査会社は「投票に行きそうな有権者」のモデルを採用するようになった。このモデルで正確な予想をするのは難しく、2016年選挙で正反対の予想が出たのはこれによる可能性もある。ギャラップなど多くの組織では、投票に行きそうな有権者のモデル化手法を詳しく説明している。他方、手法を非公開にしているところもある。有権者のリテラシーを高めるためにも、ジャーナリストは手法の透明性が高い組織の情報を優先して報道し、その手法について時間を割いて読者に説明していくべきだろう。

2)誤差について語ろう
 大半の世論調査では許容誤差を併記しているが、この概念について説明されることはほとんどない。許容誤差とは、その世論調査の結果がどの程度正確であるかを示している。例えば、ある候補者の支持率が52%、許容誤差が±4%であったとき、その候補者の支持率の「最良」推計値は48~56%となる。世論調査の数字を実数ではなく、レンジ(範囲)として有権者が考えるようになれば、この調査で出された数字についてより良い理解が得られるようになるだろう。

3)地域別調査を参照する
 大統領選挙の結果を予想する際に、全国での世論調査にどれほど意味があるか疑問に思うことが重要である。米国には大統領選挙人制度があるため、全国的に人気のある候補者が敗北する可能性がある。実際、最近5回の大統領選でそうしたケースが2回あった。全国レベルの世論調査で、僅差あるいはほどほどのリードを保っている候補者がいたとしても、それが選挙結果の正確な予想になるとは限らない。州レベルで行われる世論調査の方が情報の質は高いが、実施頻度が低いほか、全国レベルの調査と比較して誤差が大きい。回答率の低下も相まって州レベルでの調査は運営費がますます高くつくようになっているため、多くの主要調査会社はこの事業を縮小している。

 世論調査は民主主義に便益をもたらす。しかしそれは、誤解を招く方法ではなく、誠実な方法で情報が報告されるときに限られる。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

Text by The Conversation

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