「精神に問題があるのでは」トランプ氏、疑問に対し認知テスト受ける

Manuel Balce Ceneta / AP Photo

 今月16日、大統領専属医が定期健康診断の結果、トランプ大統領の認知能力は正常だと発表した。トランプ大統領によるツイートの内容や元側近スティーブ・バノン氏の暴露本に描かれている大統領の姿を受け、多くのアメリカ国民はトランプの精神状態について問題があるのではないかと疑問を呈していた。

◆認知スクリーニングの結果は非常に良好
 トランプ大統領の健康状態は良好であり、認知スクリーニングは非常によい結果だったと、ホワイトハウスの大統領専属医で海軍准将のロニー・ジャクソン医師が発表した。彼は、トランプ大統領は医学的にみて大統領としての適性に問題がないとし、認知測定のテストをなんなくクリアしたと付け加えた(USAトゥデイ)。

                                                                                                                 

 71歳の大統領は、239ポンド(約108キログラム)で、より多くの運動とより脂肪分と炭水化物の少ない食事が必要と診断された。ジャンクフードを食べ、ゴルフ以外の運動を避けることで知られているトランプ大統領は、体重が超過気味である。これからの1年間の間に10-15ポンド(5-7キログラム)を減らすという無理のない目標を立て、定期的な運動の習慣をつくっていくと語った。大統領は、運動よりも食事の改善に熱心のようだと付け加えた。

 アメリカ大統領は毎年健康診断を受けているが、今回は、精神面でより厳しい検査を受けている。

 大統領が今月、北朝鮮のよりも大きな「核のボタン」をもっているとツイートしたことや、大統領の精神状態についての暴露本が出たことから、批評たちから大っぴらに彼の精神安定について疑問の声が挙がっていた。大統領はこれに対し、自身は「非常に安定した天才」であると反論し、精神的安定性は自身の優れた財産のうちのひとつだとした。

 ジャクソン氏は、「当初この精神的適合性に関するテストは予定していなかった」とし、「彼の認知能力や神経機能には全く懸念がない」と強調した。通常このようなテストは大統領の定期健診には含まれていない。それでも、大統領の要請で、ジャクソン氏はアルツハイマーなどのあらゆる認知障害をスクリーニングする評価を行い、トランプ大統領は満点のスコアを得た。「大統領は精神的に非常に鋭敏である」とジャクソン氏は語った。

◆大統領が受けた、モントリオール認知評価とは
 トランプ大統領が受けたこの認知テストは、モントリオール認知評価検査(MoCA)と呼ばれ、軽度の認知障害または認知症を特定するためのスクリーニングツールである。動物の絵を見てその名前を回答するもの、立方体を辿るもの、7から1まで数えるものなど。質問は簡単なものに思えるかもしれないが、認知症の人が悪化させる、注意、記憶、視覚技能を特定するように設計されている(USAトゥデイ)。

 MoCAは、レバノン系カナダ人の神経学者であるジアード・ナスレディン氏が20年前の若手研究員時代に開発したものである。彼によれば、現在このテストは200ヶ国で、60ヶ国語に翻訳され使われている。ある開発途上国では、そのリーダーがもはや統治に適さなかったことを示すために、展開されている(グローブ・アンド・メール紙)。

 自身の認知テストが大統領の検査に使われたとレポーターから聞いたナスレディン氏は、「これは私にとって本当に栄誉なことだ」と言った。ナスレディン氏は、現在ケベック州のマギル大学とシャーブルック大学に所属している。「私は本当に興奮している。彼らが他のどのテストでもなく、これを使うことに決めたことがうれしい」と彼は語った。

 ナスレディン氏によると、早期認知の低下を特定するよう設計されているが、非常に高いレベルの教育を受けた人であれば結果をだますことが出来ると警告している。

 ナスレディン氏は、彼の故郷レバノンの内戦中、一家でカナダに渡ってきた。彼が15歳のときのことである。永住権を申請した彼は、その後カリフォルニア大学ロサンゼルス校に通ったのち、1990年代にカナダに戻り、認知テストを設計した。

 彼は自身のテストが、戦争難民を拒否し、イスラム教徒の自国への入国を禁じ、貧しい国から親戚を頼った移民の連鎖を止めようとするトランプ大統領を助けることになった皮肉を認識している。

「私は移民です」とナスレディン氏は語る。「米国の大統領を評価するのに貢献できることは、私にとっては光栄なことです。それが誰であろうと、私にとっては名誉です。移民は彼らが貢献していることを誇りに思っていいのです。トランプ大統領自身が移民政策について見方を変えるいい機会です。また、移民が科学進歩や社会発展に貢献する人々と認識するいい機会でもあるかもしれません」。

◆精神医学者の反応
 一方、このテストでは大統領の精神医学上の健康状態については何も分からないと主張する専門家もいる(ニューズウィーク誌)。

「私は、テストで何が分かり、何が分からないのかを理解することが重要だと思います」と、コロンビア大学精神科医のポール・アッペルバウム博士は、ニューズウィークに語った。「満点は、認知機能の変化を起こしていないことを示唆している。その点では非常に安心できる。しかし、それが伝えていることは、それだけだということを認識することが重要です」。

 つまり、他の精神的問題を抱えている可能性があるということだ。トランプ大統領が人類を根絶やしにし得ると警告し、緊急の精神衛生検査を要請した、司法精神医学者のバンディリー・リー博士は、これは自身が必要と考えていたテストではない、と語った。正常に見える人から洗い出すテストは、すでに徹底的な査定が必要な兆候を見せている人にとっては効果的なアプローチではない、とリー氏は指摘している。

Text by 鳴海汐

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