「民主主義に手錠」 共謀罪法成立、海外メディアは内容と採決手法を問題視

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 15日、改正組織的犯罪処罰法(共謀罪法)が成立した。政府は、2020年の東京五輪・パラリンピックを控えテロを未然に防ぐため、また「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」を批准するため、この法律が必要だと訴えてきた。しかし、共謀罪の成立要件が非常にあいまいなことや、強行採決により可決されたことなどを海外メディアは問題視しており、今後の運用に懸念を表明している。

◆あいまいな定義。キノコ狩りもダメ?
 BBCは、日本の共謀罪は、277の行為を計画し実行することを処罰するもので、これらの犯罪の準備における資金や物資の調達や、場所の下見などが禁じられ、2人以上で構成するグループの1人でも犯罪を計画したとされれば、全員が告発されると解説している。

 しかし、テロなどの深刻な犯罪の計画を禁ずる共謀罪の対象には、音楽の複製、アパート建設に対する抗議の座り込み、偽造切手の使用、免許なしでのモーターボート・レースへの参加、保安林でのキノコ狩り、消費税支払回避など、より軽い罪も含まれるとBBCは指摘する。違法に採ったきのこが犯罪集団の資金源となるという政府の説明に、海での密猟など別のやり方でも資金源となる可能性があるのに、対象になっていないのはおかしいとした毎日新聞の主張を紹介し、定義があまりにもあいまいなことを問題視している。

◆警察の力が増大。民主主義と人権にも影響
 CNNは、共謀罪が日本の法システムを根本的に変えてしまったという上智大学の中野晃一教授の言葉を取り上げている。同教授は、これまで日本では罪を犯していない者を罰することはできなかったが、今後は逮捕される前でも、犯罪の準備中と当局から見られただけで監視対象になってしまうと述べ、実質上の警察権力の拡大だと指摘している。

 ドイチェ・ヴェレ(DW)は、ほとんど組織犯罪やテロと直接関係のなさそうな、多くの罪を処罰する権限を警察に与えてしまう法律だというテンプル大学日本キャンパスのジェフ・キングストン教授のコメントを紹介する。同教授は共謀罪がプライバシーの権利、異議を唱える権利、知る権利、表現の自由を侵すものだとし、民主主義と人権に手錠をかける行為だと批判している。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、すでに容疑者を拘留するための日本の警察の力は強力で、刑事裁判における有罪率がほぼ100%なことから、誤審につながると危惧する反対者の声があると述べている。

◆採決のやり方にも苦言。加計問題も影響?
 各メディアとも、今回の採決で、連立与党が参院法務委員会の審議を打ち切って本会議採決に持ち込んだことを問題視している。

 FTは、すでに共謀罪法は衆院を通過していたが、参院は安倍首相と加計学園を巻き込んだスキャンダルで動きが取れなかったとし、18日に国会が閉会するため、与党は今国会で可決させるには他に選択がなかったと解説している。DWは、「究極の強硬採決」と述べ政府のやり方を批判した蓮舫民進党代表の声を紹介している。

◆治安維持法の恐怖再び?今の日本なら大丈夫という声も
 上述の中野教授は、共謀罪法を1925年の治安維持法と比較し、当時普通の人々は影響を受けないと言われながらも、法律は乱用され、共産主義者や宗教家、指導者や一般人まで処罰されることとなったと述べ、今後の運用に懸念を示している(CNN)。

 このような見方に対しDWは、懸念が歪んだ形で広められており、「反対派が怒るのは、怒ることが仕事だから。また共謀罪が日本を戦前の軍国主義に戻す策略の一部であると主張するのが仕事だから」と言う明治大学国際総合研究所の客員研究員、奥村準氏の反論を紹介している。同氏は、政府の圧迫に対抗するには、独立した司法、独立した検察庁、そして強健で自由なメディアが必要で、日本にはそのすべてがあると主張する。さらに、共謀罪による副次的影響は見られないとも述べ、日本の安全保障環境と社会的一体性の大転換でもなければ、反対派が言っているようなことを政府が実際にやることはないとしている。

Text by 山川真智子