外からの意見に憤る日本、その姿勢に疑問を持つ海外メディアも 国連報告者指摘めぐり

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 国連の特別報告者、デビッド・ケイ氏は、国連人権理事会に「表現の自由」についての対日調査報告を提出した。同氏は、日本のメディアの自由が侵され、重要な問題に関する公の議論が抑えられていると指摘し、現政権下で表現の自由が危機にあるとして法改正などを促した。これに対し日本側は憤りを持って反論しているが、欧米メディアは外からの批判に耳を貸さない姿勢だと苦言を呈している。

◆日本の立場が理解されない。特別報告者に日本猛反発
 英ガーディアン紙によれば、ケイ氏の主張は、日本の戦時の役割に関する議論の欠如、情報へのアクセスの規制、政府の圧力がもたらしたメディアの自己規制に目を向けなければ、日本の民主主義が弱体化するというものだ。在ジュネーブ国際機関日本政府代表部大使の伊原純一氏は、ケイ氏が日本政府の報道の自由への取り組みに関し「誤った内容」を広めていると非難し、報告書の一部が日本政府の説明と立場を正確に理解することなく書かれていることが遺憾だと述べている。

 英エコノミスト誌は、高市早苗総務相がケイ氏との面会を拒否し、萩生田光一官房副長官が、ケイ氏の報告は「うわさ」に基づいたものだと発言したと伝えている。同誌はさらに、大学教授のグループである「不当な日本批判を正す学者の会」が、警告はむしろケイ氏の母国アメリカに向けられるべきだと辛辣な反論をしたと述べている。また、ケイ氏が日本政府へのブリーフィングのために来日する前に、超保守の産経新聞が報告書の草案をリークし、外国人による非難だと攻撃したと報じている。

◆批判を攻撃と受け止める。外からの意見に憤る日本
 エコノミスト誌は、特別報告者の提言に拘束力はないため、無視する前に良く聞いて軽くあしらうというのがほとんどの国のやり方だが、日本はいら立ってしまうと指摘する。日本の共謀罪法案がプライバシーと表現の自由の権利への過度な規制につながるとしたジョセフ・カナタチ国連特別報告者の指摘に、「著しくバランスを欠く」、「客観的な専門家の意見ではない」と安倍首相が反論したこと、2年前に女子高生の間に売春が広がっているという特別報告者の主張に政府が異議を唱えたこと、1年前に日本の亡命希望者受け入れが少なすぎるという国連の非難を拒絶したことなどを例に挙げている。

 東京大学の林香里教授は、このような相手を軽視するしかできない日本の行動には劣等感めいたところがあるとし、外国人は日本の物事の仕組みに無知であると政府は主張するものの、なぜ日本だけ独特に違っているのかを説明することが下手すぎると指摘している。ケイ氏は、報告書は公の議論のための機会になるものなのに、敵対視することがそもそも間違いだと述べる。そして、ケイ氏の意見を不公平で偏ったものだと非難する声明に署名した前述の大学教授たちは、傍観者の立場で攻撃するのを好むとし、本当に強く異議を唱えるのなら、顔を突き合わせて話すべきだと主張している(エコノミスト誌)。

◆日本のメディアにも非はあり。民主主義のために立ち上がれ
 米コロンビア大学ジャーナリズム・スクールが発行する、コロンビア・ジャーナリズム・レビュー(CJR)のコラムニスト、ジョエル・サイモン氏は、報道の自由が現政権下で弱体化しているのは事実だとする。しかし、通常メディアは自分達の仕事が攻撃された場合は共闘するものだが、日本ではそれが起きていないとし、スクープを追わず、組織への忠誠心に価値を置き、権利をありがたがる日本のメディアにも非はあると指摘する。

 ケイ氏の提言への攻撃的な反応を見ても分かるように、日本のメディアからの一貫したプレッシャーを浴びない限り、安倍政権は報道の自由の問題に対応することはないと同氏は見ている。その一方で、問題は日本人が報道の自由という重要な権利を守るために、今の状況を乗り越えられるかだとしている。

 朝日新聞を退職後、調査報道メディア、「ワセダクロニクル」の編集長となった渡辺周氏は、日本のメディアが責任あるジャーナリズムにリスクを覚悟で取り組み、報道の自由のために立ち上がらなければ、信頼を失い、読者も減ってしまうと述べる。一度日本のメディアは崩壊する必要があるという同氏は、必要なのはビッグバンなのかもしれないとCJRに述べ、日本のジャーナリズムの未来について危惧している。

Text by 山川真智子