川内原発再稼働、支持率低下に英紙警鐘“政策を取り下げるレベル”

 九州電力川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が11日、再稼働した。これにより日本は、原子力への回帰に向けて一歩を踏み出したことになる。海外メディアの関心も高く、米英の主要紙をはじめ、多くのメディアがこのニュースを取り上げている。

◆「日本が覚悟を決めた」
 同日午前10時30分、川内原発電1号機の制御棒の引き抜きが開始され、原子炉は約30分後に臨界に達した。九州電力は、安全確認を経て、14日夜から発電を開始する予定。送電営業の開始は来月上旬となる見込みだ。2号機も10月中旬に再稼働するとしている。

 2011年3月の福島第1原発事故以降、日本の原発は一時的な緊急措置を除いて全て停止していた。その間、政府は従来よりも厳しい安全基準を制定し、それに基づいて原子力規制委員会が再稼働の可否を判断する審査を進めているが、技術的・政治的な問題で遅れがちとなっている。稼働可能な全国の43基の原子炉のうち、審査を申請しているのは25基。そのうち、川内1、2号のほか、関西電力高浜3、4号機(福井県)と四国電力伊方3号機(愛媛県)の計5基が合格している。伊方3号機は今冬の再稼働を目指している。

 そうした中、海外各紙は川内1号機の再稼働を「2年間の停止を経て原発を再開」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙=WSJ)、「日本が2年間の停止を解除」(ニューヨーク・タイムズ紙=NYT)、「福島原発事故以降初めて原子炉のスイッチを入れる」(ワシントン・ポスト紙=WP)、「日本が原発再稼働の覚悟を決めた」(フィナンシャル・タイムズ紙=FT)、「『原発ゼロ』2年で終了」(ロイター)などと大きく取り上げている。

◆「経済再生の決定的な手段」
 各紙は共通して、国民の過半数が再稼働に反対する中で、安倍政権が経済優先で再稼働を推進しているという見方をしているようだ。WSJは「福島原発事故以前の日本は電力の約30%を原子力に依存していた」とし、これを2030年までに22%に戻すという経産省の目標を紹介。WPは、原発停止により「日本は石油とガスの輸入を増やさなければならなくなり、電気代が急騰して公共財政と家計を圧迫した」と記す。そして、安倍首相は日本経済再生の「決定的な手段」として、原発再稼働を目指しているとしている。

 FTは、九州電力の「原子力へのカムバック」は、収益の早期回復を促すとともに化石燃料への支出を減らす事を意味し、株主には歓迎されるだろうというアナリストの見方を紹介している。同じイギリスのテレグラフ紙は、火力発電への依存により、温室効果ガスの削減が遅れていたという視点で、日本の「原発ゼロ」の2年間を伝えている。一方、NYTは、日本は「化石燃料のほぼ全てを輸入に頼っている」と、「原発ゼロ」を続ける厳しさを指摘しつつ、「大衆は原発の安全性にはいまだ懐疑的だ。世論調査によれば過半数が原発の永久停止を望んでいる」と伝えている。

 また、安倍首相が新安全基準を「世界一厳しい」と表現したことも各紙が伝えているが、WSJは、それに合格してもなお、再稼働にはリスクが伴うという見方を示している。同紙に答えた東京工業大学原子炉工学研究所の澤田哲生助教は、「特に長期間停止状態が続いた場合、原子炉の装置が正しく動かない可能性は常に残されている」と慎重だ。FTも、「(原発作業員たちは)紙やシミュレーターにあるものを知るだけでは十分ではない。プラントそのものの精度を完全に把握する必要がある」という福島第1原発の元技術者の警告を紹介している。

◆安倍首相の支持率低下は「政策を取り下げるレベル」
 再稼働に伴う安倍首相の支持率低下も海外メディアの関心を呼んでいる。FTは、原発再稼働は安保法案と合わせて安倍首相の支持率低下の主要因になっているとし、「一部の調査では40%以下に下がっている。これは過去の日本のリーダーたちが、支持率低下要因となっている政策を取り下げる決定を下したレベルだ」と警鐘を鳴らしている。

 一方、ロイターは今後の再稼働にはまだ多くの課題が残されていると見ている。これまでに審査に合格している5基のうち、高浜3、4号機については福井地裁が反対派の訴えを認めて再稼働を認めない仮処分を決定した事を挙げ、「司法判断が覆らないと再稼働はできない」と指摘。伊方3号機についても「地元同意が焦点だ」と伝えている。

 ロイターは、合格した5基は「沸騰水型」の福島第1とは異なる「加圧水型」であることにも注目している。「沸騰水型」では10基の審査が続いているが、「最大の課題となる地震や津波想定について結論が出た事例はなく、いつ合格となるかは不透明」だとしている。また、川内原発についても、事故の際の住民の避難計画に課題が残されているとしている。特に、鹿児島県が「子供や高齢者などの『避難弱者』を抱える医療機関や社会福祉施設のうち、川内原発から10キロ以遠の施設については計画策定を求める対象から外した」ことを不安要素に挙げる。そして「重大事故が起きたら短時間で逃げられないし、みな被ばくするだろう」という地域住民のコメントを紹介している。

Text by 内村 浩介