ヨーロッパ深部に眠る「大アドリア大陸」とは 1億年前に消えた幻の大陸
♦︎なぜ山脈上に? 堆積物の謎
もともと大アドリア大陸の海底に沈んでいた堆積物だが、今日では地表よりはるか上の山脈上に残されているのはなぜだろうか? その謎に迫るため、大陸が辿った軌跡を誕生から順に見てみよう。米学術誌のサイエンス誌は、ヒンスベルゲン博士の研究成果を要約している。それによるといまからおよそ2億4000万年前、パンゲア大陸の南側から分離したゴンドワナ大陸から大アドリア大陸が切り離され、独立した大陸となった。グリーンランドほどの面積のこの大陸は大部分が海中に沈んでおり、その海底に沈殿する堆積物は、ゆっくりと岩状の物質に変化してゆく。1億2000万年前ほどになると、大アドリア大陸は反時計回りに回転しながら現在のヨーロッパ大陸と衝突し、地下深くへ押し込まれてマントルに呑まれはじめる。このときプレートの衝突によって山脈が形成されるが、その際に沈殿物の表層がヨーロッパ大陸側に削られ、山脈上に遺ることとなった。
ヒンスベルゲン博士はビジネス・インサイダー誌に対し、セーターを使った例えでこの現象を説明している。長袖のセーターを着た状態で腕をテーブルの下に押し込むと、袖がテーブルの端にせき止められ、波打った状態でテーブルの上に留まる。大アドリア大陸は腕のようにテーブルの下に沈む一方、堆積物はセーターの裾のようにひだ状に折り曲がり、ヨーロッパの広い範囲に山脈を形成したというわけだ。