ヨーロッパ深部に眠る「大アドリア大陸」とは 1億年前に消えた幻の大陸

約1億4000年前の大アドリア大陸|Douwe van Hinsbergen

♦︎登りに行ける海底大陸
 大部分が地中深くに押し込まれてしまった大アドリア大陸だが、その一部は現在でも私たちが訪れることのできる場所に遺されている。大アドリア大陸が辿った運命を紹介するワシントン・ポスト紙は、1億年ほど前までに地殻からマントルにまで沈み込む過程において、大陸の表層の一部がこそぎ取られたと説明している。このとき削がれた岩石が、現在でも南ヨーロッパの一部の地域に残留している。元々大アドリア大陸の海底堆積物の一部が、イタリアを縦貫するアペニン山脈や、ヨーロッパを横断するアルプス山脈、そしてギリシャなどバルカン半島など広範囲に、石灰岩となって遺されている。これらの地方を訪れれば、気づかないうちにかつての大アドリア大陸の一部を目にする可能性があるというわけだ。

 ナショナル・ジオグラフィックは、大アドリア海を取り囲む山脈を登れば失われた大陸の痕跡の上に立っていることもあるだろう、と述べている。1億年前に失われたはずの大アドリア大陸と出会う機会は、南ヨーロッパの随所にまだ残されているようだ。

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Text by 青葉やまと